第4章 私の太陽【煉獄杏寿郎】
「深影…俺が居るから大丈夫だ」
再び抱きしめると深影は息を深く吐き出し胸に顔を寄せる
「杏寿郎様は温かくて安心します」
やっといつもの深影の声が聞けた
「濡れた髪と着物でここにいても体が冷えてしまう…もう少し温めてから蝶屋敷に向かうぞ」
隊服を脱いで深影に着せる、足袋も濡れていたので脱がそうと足首に触れた
「杏寿郎様?」
「濡れた足袋では足元から冷えてしまう」
「杏寿郎様にそんな事はさせられません!」
足袋を脱がせる時は大分抵抗されたが何度か手拭いを洗いながらようやく深影の顔や手足の汚れを清めた
顔の左側は腫れて目はとうとう埋もれている、右目からはまだ少し出血があり隊服の白シャツの袖を破り包帯代わりに巻いた
顔の傷だけではなく、左手はあの男から強く握られた痕と引っ掻き傷があり足も傷だらけで爪も割れていた
「今から温めるぞ」
何も見えない深影に声をかけて抱きしめた
重なる胸元から深影の少し早い鼓動を感じる柔らかな感触と甘い香りにのぼせて思わず気持ちを言葉にしてしまう
「深影に触れるのは俺だけがいい…」
しまった!と思っても深影の耳には届いて深影の体が硬くなった……が、頭を首筋に擦り付けて深影が小さな声で
「私も触れられるのなら杏寿郎様がいいです」
と言って抱きついてきた深影の体温が少し上がった
背中に回していた手を深影の顎にもっていき上を向かせ薄桃色の唇に軽く何度も口付けをした
深影が抵抗もしないで受け入れるから舌先で閉じている唇の隙間をなぞる
少し深影の体が跳ねた…
それに構わずになぞり続けると漸く唇が開き深影の中に滑りこませる
歯列と歯茎をなぞりその奥にある深影の舌を求めた
初めて味わう深影は甘くて少し血の味がする…夢中になりすぎて強く舌を吸い上げてしまった
深影は息継ぎもままならず顔を横に向けシャツを握る手が離れ拳で俺の胸元を軽く叩く
「っ…はぁ…はぁ」
仕方なく唇を離した途端に喘ぐように息をするから臍の奥が疼く
お互いの唾液で濡れて溢れた滴が深影の口端から流れた
これ以上ここに居ては深影を求めすぎてしまう
「蝶屋敷に向かうぞ」
俺は深影の事になると己の欲望を止める事がこんなにも難しいものなのかと初めて知った