第4章 私の太陽【煉獄杏寿郎】
「ちょっと張りきり過ぎたな…」
酒屋のおじさんからかなり心配されたけど大丈夫ですと言って背負ってはみたものの
だんだんと肩に食い込んできて結構辛い
近くに酒屋はあるけど 煉獄家に居た時からの付き合いもあるし
父さんが言うにはここの酒が一番香りがいいらしい
今はそのこだわりが憎らしく思えるほど背中が重い… 私が欲張り過ぎたのが原因なんだけど
少しだけ通りから離れた所にちょうどいい階段を見つけて休憩の為に腰をおろした
商店街の軒には色とりどりの提灯がぶら下がって明日の夜に火が灯る事を想像するだけでウキウキしてくる
だけど月はおぼろで雨が降る前の臭いがしている
髪に刺した簪と胸元に下がる鈴を触り元気をだす
「よし!雨が降る前に帰る!」
籠を背負い顔を上げると目の前に冴木さんが居た
飛び上がるくらいビックリしたけど背中の荷物が重く反対に腰が落ちて階段にぺたんと座った
「深影ちゃん見つけた」
そう言って隣に座る…凄くお酒臭い
お店で酔っぱらいを相手にする事もある、こんなにお酒の臭いをさせている酔っぱらいはあまり刺激してはいけない
「冴木さんどうしたんですか?」
担いでいた籠はとりあえず冴木さんと私の間に置いた
「急に深影ちゃんの姿が見えなくなるからさ淋しくなって飲みすぎたみたいだよ」
いつもとは違いヘラヘラと笑ってなんだか気持ち悪い
「明日のお酒の追加をもらいにいったんですよ」
間に置いた籠に入っている酒瓶を指差した
「重そうだし大変だろうから持ってやるよ」
冴木さんが籠に手を伸ばすのをそっと遮った
「大丈夫ですよ」
そう言って断ったのに私の手を掴み引き寄せようとする
「冴木さん?」
「どうしてだ?あの日仕出し先の奴には荷物を持たせたくせに俺には頼れないのか?」
私の手首を掴む手に力が入り冴木さんの爪が肌に食い込んでくる
「杏寿郎様は…兄さんみたいな人ですから」
冴木さんの顔が歪み嫌な笑顔になり、もう片方の手が私の髪に触れて簪を抜かれた
「兄さん?この簪を刺して貰った時の顔は兄さんとやらにする顔じゃねぇ!」
簪を投げ捨てられ爪を立てられた手首はぎりぎりと握りしめられた
「何をするんですか!」
強引に手を振りほどき簪を拾おうと手を伸ばした