第1章 歩く姿は… 【不死川 実弥】
「ごめんください不死川様いらっしゃいますか?」
何度か声をかけたけど返事もなく私は玄関で、しのぶ様が書いてくれた地図を確認した
あってると思うけどなぁ…しのぶ様も明日は柱会議だから今日は不死川様は屋敷に帰ってるはずっていってたし
「ごめんくださーい」
精一杯の声で叫ぶと
「誰だ?」
意外にも後ろから返事があり私は少し飛び上がって振り向くと、すぐ後ろに白髪で顔に傷のある眼光の鋭い男性が食料の入った紙袋をもって立っていた。
驚きのあまりに声がだせないでいると
「あぁ、あんたか。元気になったんだな」
私の横を通りすぎ玄関を開けながら言った
「上がるか?」
びっくりしてまだ動けない私に、振り向きながら声をかけてくれて私はやっと
「はい、お邪魔させていただきます」
と、返事ができた。
広い屋敷に独りで暮らしているようで、生活に最低限必要な物しか置いてないシンプルな感じというか殺風景な部屋だった
ポンと渡された座布団に座り待っていると
「待たせたな」
と言って、お茶をいれた湯呑みとお菓子を盆にいれて戻ってきた。
不死川様が私の正面に座るのを待って、私は座布団から降りて深く腰を折った
「私は、小波瀬 三冬(おばせみふゆ)と申します。私の命を助けていただきありがとうございました」
「それに両親と弟も、埋葬していただいたと聞いてます。かさねてお礼を申し上げます」
頭を下げ、すぐにお礼にこれなかった事も詫びた。そんな自分が不甲斐なく涙がこぼれる
「俺は隊士だからな、当たり前の事をしただけだ」
この声…私は聞いた事がある
私は頭を上げ袖口で涙をぬぐった
「それでも感謝の気持ちは伝えたかったんです」
時々聞こえていた「まだか?」の声に似ていた気がして
「あの…お見舞いもありがとうございました」
「!」
明らかに不死川様は視線をさまよわせて動揺していた
当たりだったみたい
「お口にあうか分かりませんが、好きだとお聞きしたので今日おはぎを作ってきました」
風呂敷をほどき重箱一杯に詰めた二種類のおはぎを座卓の上に置いた
「誰からきいた?」
怒気をはらんだ声に少し困惑してしまう