第4章 私の太陽【煉獄杏寿郎】
「あの派手な男が特別な仕出し先?」
私と杏寿郎様が並んで歩く姿を冴木さんがじっと見ていた事を私は気がつかなかった
チリンチリンと深影が歩くと鈴が鳴る
しかし和菓子屋を出た頃から嫌な視線を感じる
深影に話しかけるふりをして後ろを見ると着流しの男が俺達を見ていた
最近の深影は俺が見ても女らしくなっていたし、今日は髪も結い上げて白いうなじに下がるおくれ毛がなんとも色っぽい
しかし表情はまだ幼くて体との釣り合いがとれていなくてなんとも危うさを感じた
「深影ちょっと寄り道するぞ」
時々深影が話している小間物屋に入る深影の好きそうな可愛らしい商品が並んでいた
深影を見ると目をキラキラさせて眺めていた
「深影、御守のお礼がまだだったからな好きなのを選びなさい」
案の定「お礼なんて大丈夫です」と言って店から離れようとする
その行動は想定内だったから代わりに俺が店に入り深影に送りたい物を選んだ
俺を置いて行く事もできずに店の外で待っていた深影に赤い珊瑚の丸玉に陶器で作った小さなうさぎが付いた簪を見せる
「深影の薄い茶色の髪にきっと似合うぞ!」
「ありがとうございます凄く綺麗な簪ですね…」
嬉しそうに笑う深影を見て心臓がドクンと鼓動を早めた
深影の艶のある髪に触れて簪を刺した
女ってのは簪1つでこんなに変わるものなのか?
赤い顔で振り向いて「似合いますか?」と聞いてくる深影が今まで見た事のないくらい綺麗で一瞬言葉がでなかった
「初めて女の人に自分で選んだのを送ったが…悪くないな!綺麗だ!」
いつもの大きな声で言ってしまった様で深影は目を丸くして固まり
小間物屋にいた客や通りを歩いている人に注目され深影の顔は
ゆで上がったタコのように赤く頭から湯気が出てる様に見える
「はっはっはっ!深影恥ずかしいか?」
固まったまま動けないでいる深影の手をとり歩きだす
「これくらいで赤くなるとは可愛らしいな!」
そのまま恥ずかしがって俯く深影と手を繋ぎ屋敷まで帰った
千寿郎は手を繋ぎながら帰ってきた俺達を見て目を丸くした
「兄上 深影おかえりなさい…姉上お顔が赤いですよ?」
深影の顔を覗きこみ笑った
「いかにも!ずっと赤い!」
柔らかな母上の手を思い出し離せずにいたのは俺の方だった