第3章 20センチ 【時透 無一郎】
「悪いが俺は女を口説いた事はねぇよ」
それが宇随さんの答えだ…まぁぬけぬけと言えたもんだとも思ったけど、目の前の宇随さんを見ればそれもそうだな…と納得するしかない
3人のお嫁さんは楽しそうに笑っている、そんな笑顔を作ってあげれる宇随さんはたしかに心もカッコいい男なんだろう
夕食をご馳走になりながらしみじみ思った
ただ時々須磨さんが僕をチラチラて見てくる…ごはん粒でも顔に付いてるのだろうかと茶碗を置いて顔を触った
「須磨…時透が戸惑ってるから聞きたい事があるなら派手に聞けよ」
さっきから、そわそわしてんのが面白いと宇随さんは肩を揺らして笑う
「あんたはくノ一の癖に隠し事もできないの?」
「須磨は素直な所がいい所だものね」
まきをさんと雛鶴さんの2人にからかわれて須磨さんはばつの悪い顔をして僕をみる
「時透くんの思い人の三咲さんってどんな方なの?」
刀鍛冶の里の陰陽師で日輪刀に神楽を捧げていて、御神体の刀が彼女が持つと紫水晶のようになり、舞うたびに神気が増して神々しく綺麗だった事を話した
「あぁ!あの陰陽師の娘か!」
「天元様知っているの?」
「見た事はある…面を付けてるから素顔は知らないな…派手に美人か?」
「美人ってよくわからないけど…… あまね様みたいな感じかな」
「あまね様も神職の家系だからな…その三咲はお前より年上じゃないか?」
「6歳上だよ」
「えーーーーーっ!!!」
4人が声をそろえて驚いた
「お前……ど派手な奴だな」
雛鶴さんが僕を見つめて心配そうに口を開いた
「時透さんのその思いは恋なのかしら?」
母親を早くに亡くした僕は、その面影を三咲に見ているのじゃないかと心配していた
たしかに褥に横になっている三咲を母さんの姿と重ねたのかもしれない
うーーんと悩んでいたら
「私余計な事を言ってしまったみたいね」
雛鶴さんがしゅんと肩を落とす
「そんな事はねぇよ 神楽を舞っている三咲は派手に綺麗だったんだろ?その姿以外は余り見てないみたいだし、もう一度地味な三咲に会ってみるのもいいんじゃねぇか?」
その日は「お前は食べないから背も伸びないんだよ」と宇随さんに言われながお嫁さん達が作った美味しい料理を沢山食べて帰った