第3章 20センチ 【時透 無一郎】
褥に横になっている三咲は神楽の時とは違い
少し顔色が悪いけど僕と玄弥のやりとりを優しい顔をして見守っていた
そんな玄弥と僕の不毛な戦いは三咲の一声で終りを告げる
「玄弥くんにお願いします、時透さんは柱様なんですから まずは体を万全の状態に戻すのが先ですよ」
褥から手を出して僕の膝に触れてポンポンと落ち着かせる様に叩いた
少し眠たそうな目で三咲が見るから胸がキュンとした
そっと手を伸ばし三咲の頬に触れてみた
戸惑い赤く染まっていく三咲の頬を見つめる
頬の感触が柔らかくて気持ちがいいでもまだ足りない、もっと三咲の体温を感じたい
顔を三咲に近づけて頬に触れるだけの口付けをした
「三咲さん…もう少しだけ待っていてくれる?」
耳元で呟き少し匂いを嗅いだ、それから耳朶を甘く噛んで三咲を見つめる
目を大きく開きますます顔が赤くなった
6歳も年上には見えないな…可愛い…もう一度頬に唇を寄せようと顔を近づけると
「なにをしてるんですか!隠の方来てください!」
柊が真っ赤な顔をして怒って僕の顔を引き剥がす
その勢いで玄弥と目が合うと玄弥の顔も赤かった
隠が慌てて駆け込んでくると柊は
「早く、早く連れて帰ってください!」と半ば転がされる様に寝室から追い出されて隠に担がれ刀鍛冶の里を後にした
指先と唇に三咲の感触と温もりが残っていて、そこからじわじわと心臓に温もりが流れてくるようで体がポカポカする
始めて嗅いだ母さん以外の女の子の匂いを思い出し自然と顔がにやける
玄弥の顔……面白かったなぁ
里に帰ったら宇随さんに会いに行こう
何を食べたら早く三咲との距離が縮まるのか聞かなくちゃ
胡蝶さんにも背が伸びる薬があるか聞いてみよう
「頑張ってね、なるべく早く里に帰りたいから」
「任せて下さい!」
隠に指示を出したら元気な返事が返ってきて、何故か安心してしまい眠ってしまった