第3章 20センチ 【時透 無一郎】
上弦2匹との激闘の朝、刀鍛冶の里は悲しむ暇もなく移動の準備を始めていた
鬼から受けた毒は、禰豆子の血鬼術で体からは消えたが、痣の出現と上弦との死闘で体力も体もボロボロだった
隠もすぐに迎えに来ていたけど、どうしても三咲の顔が見たくて屋敷に寄ってもらった
柊は昨日の昼に僕が言った
「葛野家の祈祷は役にたってない」の発言に大層ご立腹のままで僕に対しての視線が刺々しい
「……昨日は悪かった、あの祠での三咲は凄く綺麗だったし炭治郎達が上弦に勝てたのも幸運のおかげもあった…と思う」
「三咲さんって呼んで下さい、私は柊でかまいません それで、ご用はなんですか?」
「三咲さんに直接お礼が言いたいんだ」
柊も刀鍛冶の里で、暮らしているから柱である僕の立場を知っている
鬼殺隊の最高位である柱の言葉だ
「三咲様は、御祈祷の後は体に巡らした神気の反動で一日中起き上がれません寝室での挨拶になります」
隠には玄関で待機するように言ってから
ペコリと柊は頭を下げ案内してくれた
閉じた襖の前で柊が正座をする
「三咲様、霞柱様がお会いしたいそうです」
「お通しして下さい」
三咲の柔らかい声が聞こえて我慢が出来ず、柊が襖に手をかけるより早く自分で開いた
さっきよりも怖い顔の柊に睨まれ小さく「ごめん」と謝った
何故か褥に横になっている三咲の側に玄弥が座っていた
聞けば炭治郎に上背のある三咲を新しい里に担いで行ってくれと頼まれたらしい
「なんで玄弥?僕が担ぐから帰りなよ」
三咲と玄弥の間に無理やり体をねじこむ
「なんでって俺は鬼食いしてるから傷の治りも早いし、背丈も180あるから170くらいの三咲さんを担ぐにはちょうどいいから……てか、なんで怒ってるの?」
確かに僕は150しか無いんだけど…玄弥が彼女に触れるなんてなんか嫌だ
「僕が担ぐ!」
「どうしてそうなるの?無理でしょ?傷口開くよ?」
「大丈夫…はぁ…柱…だから…はぁ…全集中…だから」
正直体中が悲鳴をあげていて、体が小刻みにプルプルと震えた