第3章 20センチ 【時透 無一郎】
神楽を舞始め10時間はたった頃外の気配が変わった、血の臭いがする…
8ッ目の型を舞終わると足を止めた
柊は突然足を止めた私を見て不思議そうな顔をした
「柊、祠の外に出て里の人が逃げてきたら祠の奥に連れて行きなさい…血の臭いがします」
再び神楽を舞う私を見つめ、うなずき祠の外に向かった
「柊さん!」
小鉄くんと鉄穴塚さん…に担がれた時透さんが走ってくる
「時透さんが上弦の伍に勝ちました!」
小鉄くんはお面の隙間から涙をボロボロこぼし興奮しながら叫ぶ
でも、時透さんは鬼の毒が回り泡を吹きながら呼吸を必死に整えている
それでも炭治郎くん達がまだ戦っている鬼の元に行くのだと小鉄は再び叫び走り去ろうとした
「柊!すぐに時透さんをこちらへ!」
祠にいる三咲様の声が聞こた、先を急ぐ三人を引きずる様に中に入れる
昼間に合った時とは全く違う…これが炭治郎の言った空気か…
神楽装束の彼女は1000年続く陰陽師、葛野一族当主としての凄まじい神気をその身にまとい神々しく輝き美しかった
上弦の伍の鬼を必死に倒してきたから分かる、今の彼女には上弦の鬼ですら近づく事も出来ないだろう
鉄穴塚に担がれたまま彼女の所に近づいた
「今、戦っている隊士方に葛野家の幸運を運んで下さい」
彼女の唇が額に触れる、炭治郎が言っていた空気の薄い層が出来る
毒の回った体が少し軽くなった気がした
「ありがとう」
そんな素直な言葉がポロリと口からこぼれてしまう
彼女は「どういたしまして」と微笑み再び神楽を舞う
柊と呼ばれている女が祠の外まで見送ってくれた
「逃げてる人がいたらここに来るように言って下さい、三咲様が守って下さいますから」
そう言うと頭を下げて祠に帰っていった
そうか、彼女は三咲という名前なのか…今度は覚えられる
「さぁ炭治郎に刀を届けにいくぞ」
まだ上弦との戦いは終わっていない戦っている隊士がいる、その隊士を守り助けるのが柱なんだ…踏ん張っていてくれ
そう願いまだ完全には仕上がっていない日輪刀を握りしめた