第3章 20センチ 【時透 無一郎】
あんなにハッキリと言われたのは初めてだった、確かにどんなに魂を削るように祈りを捧げても鬼殺隊士が死なない訳ではない
「意味があるのか?」
と、長に意見をした鍛冶もいると耳に入っている
それでも私は今日も少しの助けになる事を信じて舞をささげるのだ
「なんて失礼な人なんでしょう」
顔を真っ赤にして怒っているのだろう
小堂 柊(こどうひいらぎ)の、お面から見える耳が赤くなっていた
「仕方がないよ、犠牲が出ているのは事実だし…」
「三咲(みさき)様のせいではありません!だいたい隊士の力量も下がってると、長も申していました」
葛野一族は当主が選ばれると刀鍛冶の里に身を置き
それ以外の者は1000年守り続けている神社の神主をしている
小堂一族は氏子という形で側に使えてくれていた
小堂一族は、古くから当主より年下の女子を1人供につける習わしがあり
柊が10歳の時に私の側に使える事になった
私が16歳の時に葛野家の神社が鬼に襲われ、一族と神社が炎につつまれ全てなくなってしまった
柊には「使える神社も無くなったのだから小堂の家にお帰り、私に縛られなくてもいい自由に生きなさい」と伝えたのだけど
「私の主は三咲様です」
と、頑なに言い張りもう4年がたっていた
「そんな事より、三咲様そろそろ温泉へ行かれる時間です」
そう、今日は御祈祷を日輪刀に捧げる大事な日なのだ
朝に小豆粥を食べ神事用の井戸に菖蒲の葉を落とし清める
温泉で全身の汚れを落とし、昼に少し眠る
歯を磨き、菖蒲の葉で清めた水と御神体に捧げた塩でまずは口をゆすぎ、後は全身にかぶる
御祈祷の装束と装飾品を身に着け、屋敷の奥にある御神体を納めている祠にむかい一晩中舞を納める
神事をする時の1日の流れだった