第2章 また、会いにいきます 【富岡 義勇】
【ときわみづきの100年後】
18歳の誕生日の夜、寝る前に何気なく見上げた満月が私の深い記憶を少しずつ呼び覚ました
昔も今も私は「みづき」と呼ばれている
お父さん、お母さんがいて、私はちゃんと人間だ
鬼はおとぎ話の世界にしか居なくて鬼殺隊の人達が鬼の大将を倒したんだ、と思った
受験は地元の大学に決めていたのを、鬼殺隊の里の近くに行きたくて
「今から変える!?一緒にって言ったじゃん!」
友達からは色々言われたけど鬼じゃなくなった私の短い人生、待ってるだけで時間だけ過ぎるなんてたえられなかった
冨岡さんはこの時代に生まれてる?凄く歳の差があったらどうしよう…
記憶が目覚め始めた頃の私は、限りなくバカでポジティブだった
日本の人口ざっと1億としても運命ってあるじゃん!と思っていたのはまだ青春してた時
今の私には現実を生きるのに手一杯だ
「常磐先生ー!」
せっぱ詰まった生徒の声がする、私は理科の教師になり、郊外の高校に勤務している
鬼殺隊の里から離れたくなかったけど、夢ばかり見てられないからちゃんと就職はしたのだ
この高校に決めたのは、創立者の道楽で天文台があったから今日も満月だし私は泊まり込みをするつもりで荷物を天文台に運ぶ途中だった
「どうしたの?」
今年県代表で全国大会に出る、バレー部の部長とマネージャーが最短距離で走ってきた
「顧問の先生とコーチが昨日牡蠣にあたっていないんです!」
なるほど…あの二人呑み仲間だもんな
「今日から都内の高校とここの合宿所で3日間みっちり練習なんです!」
元気だなぁ…青春って感じ
「私達の責任者がいないんで!常磐先生お願いします!」
なんですと?
「えっ!私?バレーは授業でしかした事ないし、部活の顧問もした事ないよ…他の先生は?」
「誰もいないからお願いします!」
2人そろって頭を下げる…まぁ誰もいないから理系の私の所に来たんだよね
今の子供は生意気でひねくれてるけど、やっぱり子供は可愛いのよね…
「……分かりました」
パァッと花が咲くように2人は笑顔になる
何人育ててもこの笑顔がたまらなく愛しくてしかたないのだ