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かわいいひと

第2章  また、会いにいきます 【富岡 義勇】







「鬼…だったな」


不死川の声が近づいてきた、冨岡は振り返り不死川を見る



「俺が斬れなかったら、代わりに斬るんじゃなかったのか?」



不死川はただの着流し姿に籠を持っていた



「お前の事は気に入らないが、背中は任せる事は出来る位は認めてるよ」


そう言って縁側に腰を下ろし、籠からおはぎと大きな瓢箪に入った酒とお猪口を取り出し並べた



「もしかしてつまみはおはぎか?」


「お前にはこっちだ」

もう一つ皿を取り出し冨岡に渡す


「俺の嫁が作った鮭大根だありがたく食え!お前は来世でしか作ってもらえないみたいだしな」



大きめのお猪口に酒を入れ冨岡に渡す


「三冬の奴箸入れ忘れてやがる」


「取ってくる」


「あぁ…悪いな冨岡」

台所に向かう途中で立ち止まり月を見上げてから、振り返り不死川を見る



「不死川…ありがとう」

意外と照れ屋な不死川は顔をそらして赤くなった顔を隠し


「気に入らないが仲間だからな」と言った


俺の弱さに気付いても必ず斬ると信じてくれた
今弱っている俺に付き合ってくれてる



二人で縁側に座り月を眺めながら酒を飲む


「気に入らないか……俺は嫌われてはないんだな」
ポツリと、不死川の耳には届かないくらい小さく呟いた


味の染みこんだ大根を一口食べる、冨岡が口元を少し緩ませて不死川を見た


「美味いな…凄く美味い」


初めてみる冨岡の嬉しそうな顔に、ぷっ、と吹き出して笑う


不死川はやっと酒を持ってきた本当の理由を言えた


「深月を斬った後、腹を切るんじゃないかと思った」


でも、余計なお世話だったなと、冨岡のお猪口に酒を注いだ




「……正直それも考えた…でも深月が百人育てたなら、俺はまだまだだからな、今腹を切っても会えないだろうな」



……だからまだ死ねなかった



この呟きは不死川の耳にしっかり届いた







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