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かわいいひと

第16章 露草の消ぬべき恋も【宇随天元】




「あんなに天元様がお願いしたのに 峰緒さんが嫁に来ないなんて言ったら 私が噛みついてやります!」


須磨が涙と鼻水を滴ながら言うと いつもなら「何またバカな事言って!」と 怒るまきをも頷き

「私だって尻を叩いてやります!」と泣いていた


俺の嫁達はいい女ばかりだ



峰緒を布団に寝かせると冨岡が起きていた さすが元柱だな あのわずかな気配に気付いたらしい


「宇随…」

「たぶん大丈夫だ 親父さんは娘の気持ちくらい分かってるよ」


それでも冨岡は竈門の日輪刀を持ち出し宇随の後ろに座った


宇随が縁側に座ると 昼間と同じように気付いた時には庭に立っていた


「さすがだな…親父さんの腕は鈍ってねぇ」

「やはり峰緒には殺せませんでしたか…」

刹那…峰緒の父親から肌が痺れるほどの殺気が放たれた
40歳…様々な経験を積み重ね技術と思考が忍としては成熟している時期になる

7年前と同じ殺気を一瞬で放った 峰緒の父親に冨岡ですら全身の肌が粟立ち 日輪刀を握る手に力が入る

冨岡の前に座る宇随は座ったまま呑気な声をだした


「峰緒を随分と待たせちまったが 嫁にもらうぞ もちろん双子も…それから親父さんも一緒に来て欲しい」

「私もか?」

「見ての通りこんな体だ 俺だけじゃ双子を抱えてやれねぇだろ?親父さんが必要だ…派手に皆で家族になろうや」


艶のある響く声で 明るく笑う宇随に 冨岡は困惑していた
こんな殺気を放ってる相手に対して宇随は全く警戒もしていない それにいつもの自信に満ちた笑顔で家族になれと言っている

親父さんと言われた相手を見ると 鋭い目で宇随を見た後 一瞬で宇随の目の前に立ち 忍刀が宇随の首に当たっていた


それでも笑う宇随と峰緒の父親はしばらく対峙すると
父親は忍刀を下ろし 空気まで重たくしたような殺気を解いた


「7年の間にだいぶん修羅場をくぐり抜けたようですな?」

「鬼狩りをしてたからな」

「ほう…あの化け物と…そちらさん方も同じ生業ですかな?」


宇随が振り向けば 3人の嫁と さっきまでイビキをかいて寝ていたはずの 竈門 我妻 嘴平 も起きて冨岡と一緒に座っていた


「天元様…皆さんいい顔をしてますな」


この時にやっと峰緒の父親は笑った


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