第16章 露草の消ぬべき恋も【宇随天元】
「あぁ…ちゃんと言えたぞ ほら一緒に食べよう…美味しいんだろう?」
親子のように3人長椅子に座り田楽を食べていると宇随が歩いて来るのが見えた
冨岡が手を上げると宇随が気付いて寄ってくる
「なんだ冨岡ぁ…ずいぶんちっちぇ友達ができたなぁ?」
「あぁ…」
嫁達は温泉街で炭治郎達に土産物を探しているらしい
「ちっちぇガキ共!派手に美味いか?」
198もあるとしゃがんでも大きいし 派手な眼帯をしている宇随に2人は驚いていたが
「味噌屋のおじちゃんの芋が1番美味しいんだ !」
元気に答えた男の子に「そうか」と大きな手で頭を撫でて笑う
美形の宇随の笑顔は小さな子供にも効果はバツグンで露花が「私も撫でて」と頬を染めた
「姫さんもこの男前がわかるかぁ 」
そんな事を言いながら露花の頭を撫でてやる
子供相手に遊んでいたら買い物を終えた嫁達が来た
「天元様ーー」須磨が宇随を呼びながら手を振る
「おぉ!こっちだ」
「はい!」
宇随が手を振る……が
小さな男の子も須磨の方を振り返り手を振る
?????
その場にいた大人はみな男の子を見た
「なんでお前が手を振ってんの?」
深い灰色の髪と群青色の瞳を持つ男の子に露花以外の皆が目を向ける
「名前だよ天元って言うの 宇随天元…私は宇随露花で双子なんだよ」
「……いくつだ?」
宇随の声がかすれている
「7歳だよ?」
宇随が座り込み双子を並べて顔をじっと見ていた
雛鶴以外の嫁は宇随の動揺に首をかしげるが 雛鶴は口に手を当て驚いている
「母親の名前を…聞いていいか?」
声が震えている…忍を抜けて感情を殺せなくなったな…
「2人ともここに居たのか…」
元忍の嫁達と元鬼殺隊の冨岡は背後から声をかけてきた相手に身構えた
声をかけられるまで音も気配も空気すら揺らぐ事なく中年の男性はそこにいた
峰緒はくノ一としてかなり優秀だったが 里の男相手に敵うはずも無い
なのに5人の追手は帰って来なかった しかも死体すら見つからなかった