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かわいいひと

第15章 骨まで愛して 【妓夫太郎】




暗い地下室に現れたのは洋装姿の鬼舞辻無惨だった

妓夫太郎は美津から離れ膝を付いて頭を下げた


「久しぶりだな妓夫太郎…そこに転がっている女が今 お前が執着している女か…」


「…はい」

そうだ…無惨様には全て見られている

頭を下げたまま返事をする妓夫太郎をチラリとみて少し口角を上げた


「私の血を分けてやるか?」


弾かれたように顔を上げた妓夫太郎の顔は驚き一瞬目がキラキラと輝いた

妓夫太郎は美津の顔を見ると 美津の枕元にある鼈甲飴に気付いて妓夫太郎は首を横に動かした



「ほう……そうか…」



「無惨様のお気持ちはありがたく…しかし…美津は人のまま死なせたいと思います


美津は食いしん坊で特に甘味が大好きなんです…同じ鬼になればずっと一緒に居られますが

人の食べ物は食べれなくなります…きっと美津には……
それは悲しい事だと思うから……

俺は看取りたいとおもってます」



妓夫太郎は再び無惨へと頭を下げた




「私をあまり失望させるな…」

無惨は妓夫太郎をギロリと睨む
頭を下げたままでも視線は体を突き抜け腹の底から沸き上がるような恐怖で肝が冷える



人の情を忘れられない愚か者だと思われただろうか…

だがそれ以上に無惨様への忠誠心は揺るぎない これからまだまだ強くなり無惨様の使える駒でありたいと思っている




「お前の忠誠心は気に入っている…好きにすればいい」






再び琵琶の音が響くと無惨は消えた



無惨の消えた空間に妓夫太郎は深く頭を下げた





美津の瞳孔は開いたまま浅い呼吸をして冷たくなった指が居なくなった温もりを探すように布団の上を掻いている



妓夫太郎は美津が後少しで死んでしまうのはわかっていた

擬態を解き本来の鬼の姿で美津を抱きしめ布団を掻いていた指を口に含み牙を立て噛みつき美津の稀血を啜った


体に稀血が入りぞくぞくとした快感に震える…この快感を身に焼きつけたいと願った そして稀血の女は今後食べないと美津に誓う



その夜に美津は妓夫太郎に抱きしめられながら逝った




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