第14章 共感覚 【宇随 天元】
「宇随に俺からの誕生日プレゼントだよ」
不死川から押し出され 俺の前に立った赤ずきん…不死川は俺と赤ずきんを残して美術室を出て行った
ずきんを被ったままの女と2人きりにされて正直不死川が何を考えているか分からない…
震える両手で胸元を掴む女の心音は少し落ち着いていた
久々に俺は地味な告白でもされんのかな
早く言ってくれよ 返事は決まってんだ
女は深く息を吐き ゆっくりと息を吸い込んだ
「トリック オア トリート…お菓子をくれないなら…イタズラするからね…天元…」
赤いずきんを脱いで見上げて俺と目を合わせた女の目は涙で濡れていた
「実知…か?」
膝を付いて…視線を合わせる
7年前のふっくらとした顔は少しだけスッキリとして大人の女性になっていた
首から下げていた眼鏡をして実知が俺の顔を見て
「ただいま…天元は今もイケメンだね」
と ふわりと実知が笑った
膝を付いたまま実知の胸にすがり肩を震わせ声をあげて俺は泣いた
匂い 感触 温もり 鼓動の響き…実知のすべてが懐かしくて強く強く抱きしめる
そんな地味で情けない俺の頭を実知は優しくいつまでも撫でてくれた
7年分の涙には到底足りないがようやく顔を離したら派手に実知のブラウスが濡れてしまうほど泣いていた
「天元に話さないといけない事が山ほどあるの…不死川さんが今日は帰れって当直は変わってやるって言ってたよ」
「今すぐ話せよ…もう待ちたくねぇ」
実知を準備室に入れて鍵を掛けた
仮眠用に置いているソファに実知を抱いて横になる「重くない?」実知が俺の胸に頭をあずけて言うが
重さが嬉しい…夢じゃないと実感できる
実知の話は俺の想像以上で…こんな小さな体にどれだけの恐怖や不安を抱えながらも生きてくれた事とカミルという少女に感謝した…
何度も俺が派手に泣くもんだから
「天元泣きすぎだよ」
実知は優しく笑いながら首に掛けた紐を手繰りぼろぼろになったお守りをブラウスの襟からだした
それは出国前に俺が実知に渡したお守りでその中からもっとぼろぼろになっている紙が出てきた それを実知から渡されて開くと 大学の学園祭で最終日に2人で写った写真だった