第14章 共感覚 【宇随 天元】
久しぶりに俺は自分の作品に没頭していた
ネガはまた黒い筒に入れた今も鍵と一緒に首から下げている…
散々泣いて酒を飲んで二日酔いになり不死川に迷惑をかけた後 自分のマンションに帰りもう1度写真を見た
7年という長い時間はある程度は実知が居ない事実を癒してくれていたらしい
心を掻きむしられる感覚もあったが 実知が撮った俺はキャンバスに真摯に向き合っていた
実知を失ってから俺は…何を描いていた?生きている俺は何をしてる?
7年前の俺達を…実知を描きたいと久々に腕から指先へと痺れるような感覚がした
それから二科展へ出品する事を目標として真剣に取り組んだ
9月…出品したは二科展に入選した
学園でも朝礼で発表され同僚達や生徒 理事長夫妻からも喜ばれた
現役教師の入選っていうのが話題性があったのか新聞社の取材がきて小さな記事にもなった
作品名「実知」
朝日に輝く彼女がコーヒーを飲んで笑う姿を描いた
仕事が終わってからの作業だったから半年近くも実知と向き合って完成させた
入選という結果もでて実知の事も少しだけ思い出になった