第14章 共感覚 【宇随 天元】
気が付いた…実知の安否を確認したくても彼女の実家も知らなければ連絡先すら知らない
大家に聞いてみたが個人情報だからと言われて断られた
だからせめてこの部屋を解約される時に連絡を欲しいと頼んだ
通信状況がいい時に届いていたメールもなくなった
彼女の帰国予定日だった日から成田へ1週間通ったが彼女の姿は無かった
写真学科の学生になんとか写真家に連絡してもらい聞いた話は
その日は別行動をしていて実知は現地の通訳と一緒に地雷の被害にあった子供達のリハビリ施設に行き写真を撮っていた
その施設は海外の資金で建てられ運営されていた事で標的になった
実知だと思われる遺体は損傷が激しい為に身元の確認が出来ず 両親のDNAと遺体のDNAを鑑定する事になっているらしくて後の事は分からないと言われた
それからその国の情勢が悪化して実知の件は何も進まなかった
3ヶ月がたった頃大家から連絡があった
実知は単位も卒論など全て終わらせていたから実知の安否も分からないが卒業は迎えていた だから両親は実知のアパートを引き払い実家に荷物を送る事を決めたという事だった
実知の両親とアパートで会い挨拶をした
「実知さんとお付き合いをしてました宇随天元です…」
初めて逢った実知の両親は 目元と鼻は母親似で口元と輪郭は父親に似ていて 頭を下げた後涙が止まらず…
実知が居なくなって初めて俺は実知の面影のある両親の顔をみて号泣してしまった
部屋にあった俺の荷物を受け取る
「何か分かったら必ず連絡をして下さい」
深々と頭を下げ連絡先を渡した俺に母親は「分かりました」と言って涙をハンカチで押さえ
「実知を忘れろとは言えないが…君はまだ若い…実知に囚われずに君の人生を生きて欲しい
実知がそうして生きていたようにね」
父親は俺の肩に手を置きポンポンと叩いた
それは実知がよく癇癪を起こした俺にしてくれた仕草と同じで…また泣きたくなるなをぐっとこらえた