第13章 思い出紡ぎ 【悲鳴嶼 行冥】
「3人でなにしてんだぁ…仲良しだな」
宇随くんも一緒になって3人で泣いていたら不死川くんに飽きれられた
「じゃ…後は2人で」
お見合いの付添人みたいな事を言って不死川くんと宇随くんはそれぞれの部屋に帰って行き 取り残された私は行冥くんにエスコートされ308号室に入った
開いていたカーテンを閉じてベッドに座る行冥くんに手招きをされ素直に前に立つと彼は指で私の唇に触れる
『諦めろ もういる…』
宇随くんの声を思い出し なかなか踏み出せない私を行冥くんが見つめる
あの頃白い瞳で見つめられてもドキドキしたけど…黒い瞳にしっかりと見られているは新鮮でキスをしてしまうと止まらなくなりそうで怖い
「もう… いる んだよね? だとしたら…これ以上触れると私はきっと堕ちてしまう…だから行冥くんに好きな人がいるなら…昔話しだけにしよう」
笑って言ったつもりだけど 上手く笑えていない…
もう1度唇を指でなぞられるとヒリヒリとした感覚が全身に広がり私を甘く痺れさせる
唇をなぞっていた手が私の後頭部を掴み噛みつかれるようなキスをされる
舌が私の上顎をなぞると私の体がビクリと跳ねた 息が上がる頃に顎を上げられ口の中に溜まった2人の唾液を飲むように促されコクリと飲んだ
行冥くんは私を抱き上げてベッドに沈める 見下ろしてくる彼の目に私の体は反応していまい呼吸が浅くなる
「宇随の言った通りだ…私は15歳の時から姿の見えない女性に恋をした
盲目のせいで姿は見えないが手に触れた感触と抱きしめた時の匂いと鈴の音のような愛らしい声にずっとずっと恋に落ちている…
今までに恋人はいたが…声や匂い…手を繋ぐたびに夢の中の恋人とは違うと感じては気持ちが冷めていくのが申し訳なくて もう何年も恋人はいない…
分かるか?私が誰に想いをよせているか…」
「ダメ…ちゃんと言って…」
今度は私が行冥くんの唇を指でなぞりせがんだ
「弥雲だけを15歳の時から愛している だからもう俺のものになってくれ」
「私も愛してるよ」
最後の時に声に出来なかった「愛している」をやっと言葉にして伝えられた
涙腺が弱いのは変わってなくて彼の涙で再び交わしたキスは少ししょっぱかった