第2章 また、会いにいきます 【富岡 義勇】
東の空が白み始め富岡は隊服に着替える為に立ち上がると、その気配で深月が起きた
「すいません私寝てしまったんですね」
身仕度を始める富岡に気付いて、土間に降り桶に水をくみ「少し冷たいですがサッパリしますよ」と、手拭いを渡した
富岡は素直に受け取り、顔を洗い体も拭い隊服に着替えた
二人は後ろの奥でまだ寝ている子供に背を向けて土間に腰掛け深月の入れた熱いお茶を飲んだ
「世話になったな」お茶を飲み終え富岡は立ち上り出て行く
深月も羽織を引っ掛け外に出て扉を閉める
何故追いかけてきたか分からなくて眉間に皺をよせた
「お礼を言うのは私の方です、私の願いは聞いてくれるんですよね?」
「あぁ…手が離れたら必ず俺の手で送る」
深月の目を見てしっかりと頷いた
「あの…でしたら連絡はどうしたらいいか教えてくれないと困りますよ」
「…忘れてた」顔をむぅとさせて考える
ぷっ、と吹き出して富岡の腕を叩く本当に掴みどころのない柱さんだねと無邪気に笑った
深月は二百年も長く生きているとは感じさせない位の可愛らしさがある、二十歳の頃から歳は取ってないので、元が童顔の愛くるしい顔に大きめの目がくるくると表情を変え、富岡を混乱させる
しかも普段見ている鬼とは違い、今も日を浴び早朝の冷たい空気に触れて鼻先と頬が赤くなっている……
じっとただ見つめてくる富岡に深月が戸惑い始めた時に
「こんな朝っぱらから見せつけてくれるな!男連れこんでんじゃねぇか」
富岡が深月を背に庇いながら振り向いた先に男が立っていた
「勘次郎さん…こんな朝早くに何の用事ですか?」
羽織をしっかりと体に巻き付け深月が問いかけるも返事をせずに富岡をじろじろと見る
「子供もいるのに昨晩はお楽しみだったみたいだな」
深月の薄い寝間着姿は羽織一枚だけでは妙に艶かしく見えて、富岡は自分の羽織を深月に掛けてやりながら、知り合いなのか?と聞いた
「近くの村の名主様の次男坊さんです」
羽織で体を隠し富岡の影に隠れて呟いた
「勘次郎さん、この方はこれから少し世話になる知り合いですよ」
「俺の世話は嫌がって、こいつの世話にはなるんだな…可愛い顔してひどいアバズレだな」
富岡を情夫と決めつけ、話が噛み合わない