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かわいいひと

第13章 思い出紡ぎ 【悲鳴嶼 行冥】




御館様に呼ばれたと行冥くんは出ていき帰ってずっと泣いている


玄弥くんは刀鍛冶の里で一緒に闘った仲間が岩柱の訓練の所まで来たからと一緒に野営をしているから屋敷には私と行冥くんの2人きりしかいなかった



「行冥くん…」

声をかけると隣をポンポンと叩いて座っていいと合図をしてくれた

隣に座ると彼はコロンと横になり私の膝を枕にする
久しぶりに2人きりになって少し甘えてくれるのが嬉しい…でもまだ泣いている



「もうすぐ最終決戦が始まる…明日から夜は御館様の屋敷に泊まる事になる」



「最終決戦…」



意外と柔らかい髪をそっと撫でる

長い1000年にも及ぶ闘いの総力戦になる最終決戦…絶対に勝たないといけない闘い…



「御館様は自身を犠牲にされる覚悟で…それを私は止められない」


もう長くはない命を…


涙が私の寝間着を濡らしていく…

行冥くんと御館様との間には他の柱とは違う2人だけの絆があった
だからこそ死に向かう御館様の覚悟を彼は分かるから止められない


「今の鬼殺隊なら勝てると御館様が思うなら…絶対に勝てるそう信じるしかないよ
私達が迷っては駄目 行冥くんも考えるのは今夜だけだよ…

不安なら…その気持ちを今夜私にぶつけていいから…
そして朝にはいつものあなたに戻るの

御館様は勝つと思って勝負をするんだから行冥くんも私達も闘うしかない」



「…弥雲」


私のこぼした涙が行冥くんの頬に当たっていた

分かっている この決戦で生き残れる隊士は何人いるのだろう 無惨の能力すら全て分かってはいない半分手探りな状態での闘いになる

死んでほしくは無いけど命を惜しんでいては絶対に勝てない相手

行冥くんと最後の日になるかもしれない 今夜は彼の全てを欲しかった



「行冥くん…同じ布団で寝よう」










夜明けが来て隊士達の声が聞こえた頃 彼は私と繋がっていた体を離した

新しい隊服を着た彼の背中は昨晩のような儚さはなくなり いつもの行冥くんになっていた


乱暴に抱かれて動けない私の側にきて彼は私の顔に触れる



「弥雲…隣にいてくれてありがとう」

「私の方こそ…」

『ありがとう』の声は彼に口付けられて言えなかった…でもちゃん伝わっている

行冥くんとの最後の夜の日だった



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