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かわいいひと

第2章  また、会いにいきます 【富岡 義勇】





臨月の女が鬼に喰われ、その腹から産まれたのが深月だった


皆が気味悪がり、引取り手も無かった深月を肝の据わった道場主が引取り弟子達も協力して育てた

暫くして深月がおかしい事に気付く、この頃は鬼から襲われた子供と皆が知っていたからその影響だど思われた

どんなに大きな怪我をしても他人の血を飲むと治るのだ

普段の食事には人を食べる事もましてや食べたいと思う事もない

ただ怪我をした時にだけ、その怪我の具合にあった量の血を欲しくなる

それから三十年過ぎて深月が二十歳辺りから歳をとらなくなった

鬼に襲われた子供という事を知る人は次第に居なくなり、同じ所に長くは暮らせなくなる


それでも一人は寂しくて、捨て子や鬼から逃げた子供などを拾い育ててきた


「何年生きてる?」富岡の質問に



女の子に歳を聞くなんて富岡さん野暮ですよと笑い富岡の肩をパチパチ叩く

それから暫く空を見上げ息を吐いた




「もう数えるのは止めました」


「みんな先に死んでしまいますから、何年って数えるたびに悲しくなります」


「それともう一つ血を飲む事も止めました」


台所で仲良く食事の支度をする子供達を見て


「あの子達が最後です」


「男の子はもう十二歳ですからもうすぐ奉公に出します」


「女の子は十三歳なんですが、器量もいいし働き者なので嫁にしたいって話もあります」





富岡さんあの子達が私の手から離れた時に私を斬りに来て下さい



子供達は支度に夢中で二人の会話は聞こえてはいない


すぐに「分かった」と言えず黙りこんでしまった




富岡さんが来ないと食べちゃうかもしれませんよ



覗き込むようにして無邪気に笑って空を見上げた



深月は空を見上げたまま



「では最後の一つを特別に教えます」




私は二百年生きました、そんな女の子は人ではないでしょう?






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