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かわいいひと

第12章 私の太陽 令和編【煉獄杏寿郎】




「触れずにはいられない…」


そう頭上から落ちてきた艶のある声に鼓膜が震え 吸い付かれた胸元がチリチリと焦がれていく


包み込むように抱きしめられ
昔の感触と記憶がよみがえる


任務に行く杏さまを玄関まで見送ると決まって抱きしめられた

強く抱きしめられるのだけど体には力が入ってなくて 鍛え上げた筋肉質の体がなぜか柔らかく感じ

このまま帰ってこないかもしれないという不安な思いを柔らかく溶かして安心させてくれた




それから「愛している」と耳を唇でなぞりながら囁き頬をすり寄せると体を離す


玄関を出れば私の知る杏さまではなく

【鬼殺隊炎柱 煉獄杏寿郎】

炎の羽織を背負い振り返ることなく気高く歩いていく…









煉獄先生が玄関を開け背中を向けた夕日が差し込み髪が黄金色に輝いた



振り返る事なく任務に向かう背中が好きだった…でも同じくらいに苦しかった


でも 彼の生きる道を託された思いを知っているから言えなかった



もう…鬼は…いない…


玄関の扉を開けて足を踏み出した背中が一瞬羽織姿と重なった…






「置いて行かないで……1人にしないで……」




煉獄先生の背中に言えずにいた言葉がポロリと溢れた



ガチャンと扉が閉まる音と同時に抱きしめられ 耳に何かが触れた

煉獄先生の息づかいが聞こえて 触れているものが唇だと分かった


耳を唇でなぞられ甘い痺れが背中に走る




「あぁ…1人にしない…」


鼓膜の震えが奥まで伝わり頭の芯が痺れる



柔らかく抱きしめられ うずめた煉獄先生の胸元からは石鹸の匂いと

昔と変わらない杏さまの匂いがした



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