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かわいいひと

第12章 私の太陽 令和編【煉獄杏寿郎】




途中で止める訳にもいかないし…何故か自然と手が動くのにまかせて髪を拭いていた



カナヲちゃんが天ぷらをのせた大きなお皿を運んでいると


「栗花落…」


煉獄先生が呼び止めてお皿のさつま芋の天ぷらをひょいと摘まみかぶりついた




『わっしょい』…でるかな?

何故かそんな事を思いながら煉獄先生に視線を向けると同時に


「わっしょい!」


大きなかけ声をだしてあっという間に大きなさつま芋の天ぷらは口の中に消えていた


「わっしよい」普通食事中には聞く事は絶対にないかけ声…

不思議な事に私も含めてここにいる全員が『わっしょい』に誰もつっこまず



ちょうど合宿所に来た不死川先生が


「もう少し声を抑えろ…うるせぇ」

先生は音量にクレームをいれていた



「いけません!杏寿郎様…行儀が悪いですよ」


再び天ぷらへと伸ばす手を背後から取り邪魔をする


「よもやよもやだな…海景は今も厳しいな」








振り向き揺れる髪からシャンプーの香りに交ざる煉獄先生の匂いが鼻腔をくすぐる
お互いの顔が近くて鼻先が触れた…驚き手を離して顔を引いた私を煉獄先生は優しい笑顔で見ていた


優しく笑う緋色の瞳を見つめていると 再びさつま芋の天ぷらを掴みいたずらっ子のような顔になり私を見ながらパクリと食べる







彼は知っているのだ…この顔すると私が彼を許してしまう事を


普段は隊士として柱として振る舞う彼が私と千寿郎様にだけに見せていた顔だ
だから…この顔が大好きだった


この緋色の瞳も黄金色の髪も

匂いも声も体温も感触も私は知っていたんだ



突然の別れからずっとずっと再び会える日を待っていた

死んで会えるならと思い準備をした時もあった でも彼はそれを望んでいなくて最後の時に3人の少年と1人の少女に私を託して逝った



震災で長くは生きれなかった私は ちゃんと彼が望んだ生き方を出来ていたのだろうか…



冷たい体になって帰ってきた彼に言えずにいた言葉があった…







「…ただいま…杏さま…」



止める事の出来ない涙が頬を伝う…目の前の愛しい人はこの言葉と涙の意味を分かってくれている

そしてなにも言わずに見守っている皆も分かっている


彼の大きな手が私の涙を拭ってくれた



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