第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
右腕の肘の上から切断をして、身体中に傷を負って内臓も損傷していたが
鬼殺隊柱の体力と全集中の呼吸の深さが驚異的な回復力を見せ1週間もすると
普通に食事も出来るようになり蝶屋敷の庭を散歩するまでになっていた
それでも痣の出現と体を酷使し過ぎた影響で以前のように刀を振り回すまでの体力はすぐには回復しなかった
元日に冨岡が目を覚ましてからバタバタとして三葉が「初詣に行ってない」と七草粥を食べながら言った
それに対して鬼殺隊に入ってからは初詣をしていないと言う冨岡に三葉が
「やっと鬼の居ない年になったんです行きましょう!」
体力作りもかねて階段の上にある神社に行く事にした
8日の朝におめかしをした三葉が蝶屋敷に着いた
薄紫の地に松竹梅柄が華やかな着物に濃紺に金糸で熨斗紋が刺繍された帯、足元は艶のあるブーツを履いている
髪はまとめて紫水晶の玉が付いた簪をさし、薄く化粧をほどこし紅をひいた三葉はたまたま見かけた我妻が言葉を失うほどだった
そんなおめかし姿の三葉は大きな風呂敷を持っていて冨岡の病室でそれを開く
「着物と羽織です…今日はこれを着て下さい」
灰色の十文字柄の着物に無地の濃紺の羽織で少し変わっていたのが紐ではなく、片手の冨岡でも大丈夫なようにボタンになっていた
着付けを三葉が手伝い髪も梳いて竜胆で染めた紐で結び
「今日は寒いですからね」
と最後に羽織と同じ色の襟巻きを巻いた
初めて見る着物に冨岡は宇随の着物だと思った
着てみると丈や裾などが丁度よく自分に合っている
「宇随のではないんだな」
「これは2年前に私が仕立てた着物と羽織です…その時にはもう着てはもらえなかったから」
あの時か…宇随に新年の羽織を仕立てていると三葉は笑った
宇随の為に…
別れを告げる俺が嫉妬して思わず
「宇随は幸せものだ」と言ったあとに
「冨岡さんのもあります」そう言われ嬉しかった…が、今から三葉を傷つけるのに喜んでるんだと自分に腹がたった
別れを一方的につげた時の三葉ね顔を思い出し胸が痛む
そんな冨岡の心情に気付いてない三葉は襟巻きを端を袷に入れて寒く内容にと整えてくれていた
「勿体なくて捨てられなかったんです
着物も…冨岡さんを思う気持ちも…
良かった…男ぶりが上がりましたよ」