第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
アオイはいつも通りに起きた
元日とはいえ屋敷にはまだ眠り続ける患者が2人と重傷者4人と怪我人が1人いる
包帯も変えないといけないし食事も出さないといけない…3人娘は昨日宇随達と夜中に初詣に行ったのでまだ起きてない無理に起こすつもりもアオイには無かった
鬼が居なくなったとはいえ、胡蝶が亡くなった事は蝶屋敷で生活をする娘達にはかなりのショックを与えていた
だから昨日の宇随達の訪問でみんなが笑顔で新年を迎える事が出来た事にアオイは感謝していた
手が痺れるほどに冷たい水で顔を洗い眠気を吹き飛ばす
後から起きてくる娘達の為にお湯を沸かす準備をする
蝶屋敷はガスと竈ありお湯はガスで沸かし、竈は米を炊く為に火をおこした
火が入ると広い台所はじんわりと温かくなる
それから病室の火鉢に炭を足すために缶の中に焼けた炭を入れて病室を回った
昨日の夜更かしでまだみんな眠っている
最後に冨岡の部屋の炭を足す
いつもと違う冨岡のベッドに近づくと三葉が潜り込み身を寄せていた
「三葉さん…」
アオイが三葉に声をかけると冨岡がゆっくりと目を開ける
「!!」
「もう少しこのままで…」
「でも…傷に…」
さわります…までは言わせてもらえず冨岡は目を閉じた
出血がひどく白かった顔色も三葉の温もりのおかげか唇の色が良くなり寝顔すら微笑んでいるように見える
アオイは少し呆れたがそのまま病室を後にした
朝食を配膳する頃には3人娘も起きてきたし三葉も姿を見せた
「アオイちゃん!冨岡さんが…」
「起きたんですよね知ってます」
重湯と裏ごしした野菜スープの入った膳を渡された
「朝…少し…冨岡さんと話しましたから」
見られた事を知った三葉はアオイと目を合わす事ができずに膳を受け取る
「2週間以上なにもお腹に入ってないのでゆっくりと時間をかけて食べさせて下さいね」
「は…い…」
ひと言返事をしてアオイの目を逃げるように病室に向かった