第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
三葉は火鉢に手をかざし指先を温めていた
今年は師走に入ると急に寒くなり手がかじかんで針仕事がやりにくい
あの日の夜に始まった決戦は多くの犠牲をだした
御館様、あまね様、ひなき様、にちか様
それに大勢の隊士達と… 悲鳴嶼、伊黒、時透、甘露寺、胡蝶の5人の柱が亡くなり
不死川、冨岡、炭治郎が意識不明の重症で蝶屋敷に運ばれ今も目を覚ます事なく眠っている
ボロボロになった冨岡の羽織に似た布地を探し
三葉は冨岡と不死川が眠るベッドの間に座り羽織の修理をしながら2人の看病をしていた
広い病室は少し寒くてアオイが火鉢に火を入れて三葉の隣に置いていき、五徳の上には鉄瓶に入ったお湯からゆったりと湯気があがる
三葉の手元にある羽織は今日修理が終わった
何日過ぎたかは三葉も覚えてはいない
ただ、羽織が元の姿に戻ったら目を覚ましてくれる…そんな思いで手を動かしていた
ふわり と冨岡の布団の上に羽織を掛ける
指で頬をつついても静かな寝息が聞こえるだけだった
今日の三葉の手には山盛りのおはぎが乗った皿と香りのいい抹茶がはいった椀をのせたお盆があった
何日か前に不死川の呼吸が全集中になっている事に気付いた宇随が三葉に話し
隠の後藤が以前炭治郎にしていた「食べ物の匂いで刺激をしてみる」を試す事にした
「不死川さんおはぎと抹茶ですよ…起きないと私が食べちゃいますよ」
そういいながら相変わらず規則正しい呼吸をしながら眠っている不死川の側にお盆を置いた
冨岡には毎日持って帰り桜の香をつけた羽織をのせる
おしぼりで冨岡の顔を拭いて頬をつついても今日も反応は無かった
不死川の顔も拭いて…つい癖で頬をつついてしまったが、こちらも反応は無く2人してあどけない顔で眠っいる
不死川の隣に座り少し冷めた抹茶を飲んでおはぎを食べる
大きく口を開けて一口でおはぎを頬張りモグモグと食べて抹茶を飲み
「美味しい…」と三葉が2個目に手を伸ばすと
「お前…旨そうに食うな…」
不死川が顔を三葉に向けて笑って言った
「起きて最初に見たのがおはぎを食べるお前かぁ…」
「不死川さん…たっ…食べます?」
「あほ…さすがにおはぎは無理だな…水が飲みてぇ」
「はい…水ですね」
三葉は不死川の頭を支えて水を飲ませた