第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
冨岡が組み紐を手に取り「結んでくれ」と言うと三葉が嬉しそうに笑い「はい」と答えて冨岡の後ろに回る
今日も洋装の三葉はスカートのポケットから茜色と緑色の亀甲柄の小さな小物入れを取り出し桜の蒔絵の櫛を取り出した
紐をほどき丁寧に冨岡の髪を三葉が梳いていく
三葉がなれた手つきで冨岡に触れ嬉しそうに髪を梳いている
その様子を側で見ていた炭治郎は2人は親密な関係だった事に気付いた
義勇さんがさっきからずっと優しい表情をしてる…
なのに2人からは甘い匂いと寂しい匂いがする…好きあってるはずなのになんでだ?
三葉は髪を結び終わると冨岡の左横に移動して膝立ちのまま冨岡を抱きしめた
甘い匂いより胸を締め付けられるような切ない匂いが濃くなった
冨岡の両手は膝に置かれたまま隊服をキュッと握っている
わずかな時間冨岡の左側が三葉の柔らかな体と桜の香りに包まれた
「私の思いを忘れないで下さい…では…お邪魔しました」
三葉は桜の香りと甘い匂いと切ない匂いを残し冨岡の屋敷を去って行った
炭治郎は冨岡の甘い匂いを感じ
「義勇さん…追い掛けなくていいんすか?」
と聞くも「出来ない…」と呟きまた独りの殻に閉じ籠ってしまう
御館様!頑張ります!
翌日…
「三葉さんも言ってました…命を繋げてくれてありがとうって…錆兎さんの思いは繋がないんですか?」
蕎麦屋で早食い競争をする2人が数人の隠に目撃される事になる
それからしばらくして炭治郎は柱稽古に参加した
宇随の基礎体力向上の走り込みも合格者の方が多くなり三葉も本来の仕事に戻り柱達に隊服を届け出掛けられる事が多くなった
そんなある日、不死川の屋敷を訪れた三葉はボロボロになった隊士の山とそれを解放するボロボロの隊士を目の当たりにする
無限打ち込みの稽古の果ての姿だと説明され、不死川は水柱との稽古に向かったと言われた
「帰りを待つ間私も手伝います!」
早速風呂でたっぷりのお湯を用意してもらい、それに水と塩を入れ海水程度のぬるま湯をつくり隊士の傷を洗い大量に用意されていた傷薬を塗った
「三葉ぁ!」
隊士の治療に走り回る三葉の背中に何故か不機嫌な不死川の怒鳴り声が響いた