第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
なかなか鍛練に姿を見せない炭治郎を三葉は心配して午前中にお見舞いに行く事を宇随に伝えて蝶屋敷へと来ていた
ちょうど玄関で炭治郎と会い今から冨岡の所に行くのだと言う
「御館様に頼まれたんだ…」
ふんす! と少し鼻息荒くして歩いていくのを
「私も一緒に…」と言って2人で冨岡の屋敷に着いた
何度も声をかけても返事はなく、どうするのかと三葉は炭治郎を見ると目が合いニッコリと人懐っこい笑顔で笑う
「はいりまーす」
えっ…入り?帰り?
戸惑う三葉の手を掴んで炭治郎はどんどんと進み奥の道場へと顔を出した
そこには冨岡が居て呆れ顔で炭治郎を見た後、三葉に気付いて驚き炭治郎に握られてる手をみて不機嫌になった…がこれは冨岡の心であって表情に変化はない
義勇さん…三葉さんもなんか甘い匂いがする
炭治郎だけは冨岡の変化に気付いた
「今日も来たのか…」
「はい!何度でも来ますよ」
足を骨折して座りにくそうにしゃがむのを腰を抱いて三葉は介助した
義勇さん?匂いが…また変わった
じっと炭治郎を見た冨岡は「何度来ても同じだ」と言って突き放し瞑想をする
「…あの冨岡さん」
三葉が冨岡の正面に座り声をかけると冨岡は目を開いた
「お百度参りの時…一緒に居てくれてありがとうございました
それと…2年前に命を懸けた人は炭治郎くんと禰豆子ちゃんだったんですね
冨岡さんが命を懸けて守ってくれたおかげで兄様と姉様は生きています
命を繋げてくれてありがとうございます」
冨岡の正面で深々と頭を下げた
「兄様から大きな戦いが始まると聞きました
今回…私が隊服に使用した糸は竜胆で染めています 竜胆には正義、勝利の花言葉があります…なので願かけみたいなものですが、ひと針ひと針気持ちを込めて縫いました…」
三葉は髪を結んでいた紫色の組み紐をほどき冨岡に前に置いた
「この紐も隊服に使用したのと同じ竜胆で染めてます…これも私が作りました…私の願いと思いを…冨岡さんの側に置いて下さい」
お互いにしばらく見つめあった2人は冨岡から目をそらし組み紐へと手を伸ばした