第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
ー柱合会議当日ー
柱合会議が竈門炭治郎とその妹で鬼となった少女が柱達の目の前に居た
必死に弁明をする炭治郎の口から「禰豆子」という言葉が出る
宇随はあの日冨岡の口から出た女の名前と同じ事に気付き冨岡を見る
相変わらずの地味な男だ…
冨岡はただ無表情で話の流れを見守っている
冨岡の無表情も三葉と恋仲の時はわずかながらも感情に合わせた表情をしていた
今の冨岡は感情を押し殺しているように宇随には見えている
ひと悶着あった後、御館様が奥からゆっくりと歩いてきた
御館様へと届いた元水柱からの手紙、鬼舞辻と炭治郎の接触、それに関係して刺客を放つほどの執着、鬼としては特殊な禰豆子…不死川の稀血への反応だけ見ても確かに何かが違った
数百年…鬼殺隊と鬼舞辻との膠着状態が崩れる可能性が確かにあった
だからと言って許せるものではないが、あの日のちぐはぐだった会話が少しだけ腑に落ちた
宇随、甘露寺、煉獄は冨岡達の様に鬼に身内を殺されたり全てを無くされて鬼殺隊になった訳ではない
鬼から人を守るために戦うのは同じだがそれぞれ志は違う
鬼を殲滅する為の冨岡の判断は正しいのかもしれない…
愛する人に命を懸けたのではなく冨岡は鬼殺隊の未来に命を懸けたんだと宇随は理解した
器の違いか…覚悟の違いか…まぁどっちもだな…
柱合会議を終えて宇随は嫁と三葉の待つ屋敷へと戻った
「あっ!天元様!」
須磨が宇随に気付いて廊下を走って飛び付いてくる
「こら!須磨!」
宇随にしがみつく須磨をまきをが引き剥がそうと宇随と須磨の間に入ってくる
「もう…2人とも…天元様お帰りなさい」
雛鶴は少し離れて宇随と目を会わせ微笑み合う
「あら…兄様は今日もモテモテですね」
最後に三葉がニコニコしながら歩いてきた
宇随は愛する4人の女をまとめて抱きしめる
俺はこの愛しい家族のこの笑顔の為に戦っている
誰がなんと言おうと一番に守るのは家族だ
感情を押し殺して笑わなくなった冨岡を少し憂う
冨岡…お前はそれで幸せなのか?