第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
「よぉ…今から任務か?」
気配を消す事が日常になっている宇随がビリビリと空気を震わせるような殺気をまとい冨岡の前に静かに降り立つ
「…今日はない」
宇随が来る事は予想していた
鬼殺隊の里にある鍛練用の山に2人は無言のまま向かう
前を行く宇随は背中に何本もの木刀を背負っていた
山の中腹辺りで宇随は振り替えると木刀を背中から下ろし1本を手に取ると冨岡に投げる
木刀は冨岡の頬を薄く切り背にあった木に刺さる
その間、瞬きもせずに冨岡は宇随の目を見て立っていた
やっぱり…派手にいい目をしてやがる
冨岡が木刀を抜いたのとほぼ同時に駆け出していた宇随が殴りかかるもそれをかわして低い姿勢から 漆の型 雫波紋突きをくりだし
宇随は 壱の型 轟 で応戦する
柱2人の本気の技に周りの木々はざわめき轟で起こった地鳴りは里全体に広がった
「お前は、三葉を守る…そう派手に俺にいったよな」
轟 の技で木刀は折れて宇随は2本目を手にする
手にしたと思った時には宇随の間合に冨岡は入っていた…が冨岡はその動きにギリギリ対応できて一撃を受け止めた
「三葉から去った理由は?」
「俺がなんの為に鬼殺隊になったのか…それを禰豆子が思い出させてくれた」
姉上の人生を奪った鬼を倒す為だ…
錆兎や他の隊士たちの志を叶える為だ
沢山の人に守られ生きている…柱を名乗る資格もない俺が…あんな花の様に綺麗な三葉の側で腑抜けている場合では無かった…
「三葉とは…間違いだった」
「お前…地味に何をいってやがる…」
重なり合う木刀がバキバキと音を立てて折れた
お互いに間合を取り再び木刀を手に取り構える
「三葉とは間違いだぁ?その禰豆子とかいう女が正しかったって言うのか!」
「禰豆子は違う…」
他の鬼とは違った…兄を喰うのではなく守ろうとした
冨岡が気付いた時には爆薬丸が投げられ冨岡の足元で連鎖して爆発が起こり土煙が上がる
土煙が揺れたと思ったら冨岡は地面に体を沈められ、宇随は冨岡の首に木刀の先を突き立て見下ろしていた
「地味に俺に負けてんじゃねぇ…」
「…精進…する…」
宇随は冨岡を残して山を下りていった