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かわいいひと

第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】




冨岡は三葉の手をギュッと握りしめてから離し立ち上がった





「なんでこんなお菓子買ってきたんですか!なんで冨岡さんはそんな辛そうな顔を…」



半年以上の間、言葉が少ない冨岡を三葉はよく観察して感情を読み取っていた
だからこそ三葉には別れを告げた冨岡の目の悲しみに気付いている



「俺の命は…ある人に預けたんだ…三葉の為には使えない…分かってくれとは言えないがそれが事実だ」



「隊服の担当も外す…三葉…今日で最後だ」


大きな声で三葉に投げ付けるように語気を荒げていい放ち冨岡は出て行った



三葉は気持ちの行き場をなくし、ただ涙がこぼれ次第にそれは慟哭へと変わった









「三葉帰ったぞ!」


翌日の昼に宇随達は帰ってきた


人の気配はあるのだが返事がない


嫁達も「変ですね…」と言いながら居間へ入ると

宇随の羽織は作りかけのまま放りだされ座卓の上や畳には干菓子が散乱している

宇随は黙ったまま居間を見て三葉の部屋に行くと声もかけずに襖を開けた


布団の上に三葉が背を向けて座っていた「三葉」と宇随が呼んでも全く動かない
宇随は歩み寄り正面に座り顔を見ると三葉は静かに泣いていた


「三葉…何があった?」


三葉の冷たい頬に触れ流れる温い涙を拭った


「兄様…お帰りなさい…まだ涙が出てますか?ふふっ…止めたくても全然止まらなくて…」



「天元様…三葉は居ました?」



まきを が様子を見に来た
何かを言いたげな まきを を目で止める

「まきを…帰って直ぐにで悪いが風呂の準備をしてくれないか
それと火鉢に炭を入れてくれ三葉が…冷たい」


まきを は頷き三葉の部屋を後にした



三葉の涙を拭った手を離すと


「兄様も…私から離れて行きますか?」


と言って宇随の手を三葉が掴み声を震わせる



「俺は派手に死ぬまで兄様だ…血の繋がりはなくても派手に心は繋がってるだろ?
三葉が俺から離れない限り三葉の事も俺が派手に守るって決めてるからな安心しろ!
ほらほら女は体を冷やすんじゃない」


そう言って自分も布団に入り冷たい三葉を抱きしめた


しばらくは宇随にしがみついて泣いていた三葉だったが体が温もってきた頃に眠ってしまった


様子を見にきた須磨に添い寝を交代した宇随はそのまま屋敷を飛び出していった





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