第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
ポタポタと毛先から滴が落ちて着物が濡れていく
「冨岡さん…ちゃんと拭かないと」
三葉が袂から手拭いを取り出し後ろに回り膝立ちをして髪を拭いていく
「日が落ちたらまだ寒いですから風邪をひいちゃいますよ」
髪を拭く三葉の仕草が自然で宇随の事もこんな風に世話をしているのかと思うと冨岡の胸はざわつく
今度は横に座り拭いていると、冨岡が顔を向けた
「動いてはいけません」
クスクスと三葉は笑いながら真っ直ぐ向くように冨岡の頬に触れた
その手を冨岡は握り指先に口付けをする
その瞬間に三葉の顔に笑顔が消えて驚きの表情をしたかと思えばみるみる顔が赤く染まり、瞳は何処を見ればいいのか迷い揺らいでいる
忙しく表情を変えて戸惑う三葉を見ながら冨岡がふわりと笑う
やっぱり俺は…
「俺は…三葉が好きなんだと思う」
三葉は驚きペタりと座り込んでしまった
そんな三葉を抱きしめると、三葉の鼓動は早くなり冨岡の胸に響いてくる
「同じだな……三葉だけだ」
体を離し冨岡は三葉の頬を両手で包み右手の親指で唇をなぞる
「嫌なら…離れてくれ」
冨岡の両手は三葉が動くとすぐにほどけてしまうほどに優しかった
「嫌…ではありません…」
震える声で三葉が答えると、冨岡はふわりと笑い「そうか…」と三葉に口付けをした
唇を離すと三葉が冨岡の胸に顔を埋めた
胸に抱く三葉が温かい…この柔らかく温かな少女を守りたいと心底思う
自分の贈った組紐に結ばれた髪が揺れて三葉の匂いがふわりと香った
その匂いを追いかけるように三葉の耳に口付けて耳の形を確かめるように舌で愛撫する
冨岡の袷をキュッと握り少し震える三葉に気付き、冨岡は安心させるように三葉の髪を背中を優しくさする
「もっと…触れたい…いいか?」
「……っ」
耳元でささやく冨岡の息が耳から首筋へと流れ三葉の体が泡立つ
三葉は逆上せた顔をあげて冨岡を潤んだ瞳で見つめ「はい…」と答えるも、恥ずかしさから冨岡の胸に額をつけて顔を隠した