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かわいいひと

第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】





蝶屋敷にて



「ギユー…チョウヤシキニコイー」


「?…冨岡さんの鴉はまた間違えてますね…ちゃんとした若い鴉に交代したらどうですか?」



「……」


「あら、聞こえないふりですか?」


とりあえず しのぶ は冨岡が来る事だけは分かった

「治療か…薬か…さてどちらでしょうね」



しばらく待つと冨岡が三葉を抱えて来た


「冨岡さんの鴉は此処に飛んで来ましたよ?」


「寛三郎…宇随の屋敷には行ったのか?」

「…イッテナイ」



冨岡が深いため息をついた


「艶(えん)はいますか?」



胡蝶の鴉が窓にふわりと舞い降りた

「宇随さんの屋敷に三葉さんは蝶屋敷に居ると伝えて下さい」


「リョーカイ」



冨岡は寛三郎の頭を軽く指で頭をつつき不甲斐ない鴉を叱っていた

この老齢の鴉は冨岡に凄くなついていて、時々迷惑をかけている自覚はあるのだが離れる気はまったく無い
冨岡が叱っている姿にも何故か優しさがあり鴉を変える気はないらしい


「さて、三葉さん…どうしました?冨岡さんに何かされました?」


何かはされたが怪我は冨岡のせいではない

額の傷は確かに小さな物だったが、時間が経つにつれて大きなたんこぶができていた


「頭を強く打ったのは心配ですが…吐き気も目眩も無いのなら大丈夫でしょうね
でも、時間を置いてから症状が出る事もありますから明日は安静にしてください。裁縫もダメですよ」


傷口を綺麗に消毒して清潔なガーゼを当てテープで止めた


左の足首は捻挫していたので固定する前に桶に入れた水で冷していると

隊服のままの宇随が「三葉!」と騒がしく入ってくる
気配や足音は消せる割に声は騒々しい



「兄様…ごめんなさい」

隊服姿を見た三葉は、宇随が任務に行かず自分を優先した事が分かり しゅんと肩を落とす


そんな三葉の顔を宇随は両手で包み頬をぷにぷにと押す


「無事ならいいんだ…だからそんな地味な顔をするな!」



「それにしても早かったですね?」



鴉を飛ばしてから余り時間はたっていない

「伊黒の所から帰る途中で派手に鼠と合流したからな!地味な冨岡なら胡蝶の所に連れて行くと思って向かってたんだよ」


宇随の足元にいた鼠が三葉の袴をよじ登って三葉の腕に抱きついた




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