第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
「三葉に必ず謝れよ…」
宇随と伊黒は合同で任務をした事もないし、ましては稽古なんかもしたことはない
宇随を見るのは柱合会議の時くらいだし、その時の柱達は御館様に逢えるので少し機嫌がいい
伊黒は殺気だつ宇随を初めて見た
体格の違いもあるが、何より死線を乗り越えてきた経験が違う
放たれた殺気で首を切り落とされた気分だった
玄関を出て行き敷地の外に出てもまだビリビリと殺気を放つ宇随に伊黒はただ立ちすくむしかなかった
神社の賽銭箱の側で三葉は倒れていた。冨岡は三葉の体を起こし賽銭箱に寄り掛からせる
顔を見ると右側の額が切れて出血をしていた
手水所で手拭いを濡らし傷口を綺麗にする、幸いなことに傷は血の量のわりには小さかった
次に瓢箪に入れた水を口に含み、気付けの丸薬を噛み潰して三葉の口に移す
これで目が覚めない時は蝶屋敷に担いで連れて行かないとダメだな…
激しい苦味が口に広がり三葉は咳込むとゆっくりと目を開いた
冨岡はもう一度瓢箪の水を口に含み三葉の口に移す
口に含んだ水は冨岡の唾液とまじりトロリとしていた、飲み込んだ三葉は初めての経験に口内の苦味は飛んでいってしまう
鼻先が触れるほどの近い距離で見つめられ、どうしていいのか分からず顔が火照り飲み込めなかった水が口の端から垂れた
「と…冨岡さん…」
小さくつぶやくが、続く言葉は冨岡に見つめられて声帯が震わずに吐息となりこぼれていく
逃げようにも背中には賽銭箱があるし、両方の頬を冨岡の手が包み離さない
親指が三葉の頬をすべり唇をなぞると三葉の唇が少し震えた
柔らかな頬と唇の感触が気持ち良くて、冨岡はそのまま温もりが伝わるまで唇を重ねる
三葉はされるがままに柔らかな口付けを何度も受け止めた
唇を冨岡の舌がなぞると三葉の背中に痺れるような感覚が走り冨岡の羽織をギュと掴む
冨岡にはその行為がいじらしく感じて強引に口内へ舌を入れた
三葉は驚き逃げようと顔を背けようとするが、背中と後頭部に手を回されてそれも出来ずにされるがままに舌を絡めとられる
2人の水音と吐息が交じり淫らな音が三葉の鼓膜を震わせる
溢れる唾液を飲み込むと唇は離れていき
冨岡の深く青みがかった瞳は三葉をじっくりと見つめる