第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
「三葉は何処に出掛けたんだ?」
担当地区の見回りにいくはずの宇随はまだ屋敷にいた
彼には守る順番がある
嫁、堅気の人、自分 の順番で、三葉は嫁と同列にいる
「伊黒様に隊服を渡しに行くと出ていきました」
「俺が行ってくるから、お前達は家で三葉を待ってろ」
そう言った宇随の姿はもう嫁達の前から居なくなった
その頃の三葉はまだ神社にいた
目が覚めると夕方になっていた、慌てた三葉は神社の御堂から出る時に
御堂から賽銭の所にある7段ほどある階段で足がもつれ転げ落ちて賽銭箱に頭をぶつけ気を失っていた
宇随が三葉に付けていたムキムキ鼠はその事を知らせる為に屋敷に向かってる途中だった
その途中で鼠は顔を見た事がある柱に出逢う、懸命に飛び付き後ろでまとめた髪をグイグイ引っ張った
違和感を感じた冨岡は手を髪に当てると何かがその手にしがみつき指をガシガシ噛んできた
見ると…宇随の鼠が何やら慌てた仕草で何かを伝えくる
じっと鼠を見ていると頭に巻いた布が以前三葉が着ていた着物に似ている
「…お前は三葉に付いてるのか?」
鼠はブンブンと頭を縦にふり冨岡を見つめ目に涙を溜めている
「三葉に何かあったのか?」
再び縦に頭を振りその勢いで涙の滴が冨岡の手にポタポタとこぼれた
「案内しろ」
冨岡の頭にポンと飛びのり真っ直ぐに行けと頭を叩く、右に曲がる時は右側を左に曲がる時は左側を叩いて石階段の下まで来て止まるように頭をバシバシ叩き石階段にぴょんぴょんと飛び写り上を指差す
「ここを登るんだな?」
鼠はブンブンと縦に頭を振りお辞儀をして階段を降りた
「宇随の所に行くんだな?」
鼠は頷き再び宇随の屋敷へと走りだした
しかしその宇随は今は伊黒の屋敷にいた
「追い返したぁ?」
昼の三葉とのやり取りを宇随に話し
「あんな女が何処にいるかは知らないし興味もない、俺は今から任務だ」
宇随の横を通り過ぎようとしたときに腕を捕まれギリギリと握られる
「甘露寺の隊服は三葉は作ってねぇ あれは以前俺がぶん殴った前田という男が作ったやつだ」
「…離せ」
握った手に一層力を加えた宇随は伊黒へ一歩近づいて視線を合わせた