第11章 雪の日に始まる【冨岡 義勇】
冨岡の羽織が揺れるたびに ふわりと桜が香る…
三葉がそばに居るようでそわそわとするのだが心地よかった
振り返り三葉をもう一度見たかった
しかし三葉の足音がしない。見送ってくれているのだとは分かったが、どう対処していいのか悩み…結局振り返る事は諦めて御館様の屋敷へとむかった
それから1年後
三葉は洋裁学校も無事に卒業して、鬼殺隊の縫製部門に在籍していた
ただ、前田の事件は御館様の耳にも入り前田にも宇随にも御咎めは無かったが
柱の妹だった事が隠に知られ妙な気を使われ出してからは
(宇随は三葉を時々送り迎えしていたが、素顔で普通の着流し姿だったので隠は気付いてなかった)
御館様の指示で三葉を指導してきた隠の監修の元、柱専属の縫製係となっていた
柱はいそがしく、縫製部門の屋敷になかなか行く事が出来なかったが三葉が専属になってからは三葉が柱の屋敷に行き採寸やら要望などを直接聞きに行ったりしている
今日も伊黒の屋敷に隊服を届けに行ったのだが、いきなりギロリと睨まれる
首に巻きついている鏑丸は、三葉にいつもの挨拶をしようと体を伸ばしてきたのだが伊黒から服の中に閉じ込められてしまった
「新しい柱の隊服はなんだ?あれで鬼からの攻撃を防げるのか?胸が…心臓が守れていない、あんな隊服を作って恥ずかしくないのか?足もあんなに…」
玄関でネチネチと口を挟む間もなく言われた
「お前の作る隊服はいらない…持って帰れ!」
最後にそう言って隊服を突き返された
新しい柱…蜜璃ちゃんのは前田さんが絶対に自分が作ると言って騒いで…
「そんなに言うのなら…前田さんにお願いするわ…三葉ちゃんごめんね」
その時の蜜璃ちゃんの顔を思い出す
柱になり隊服のデザインも変えて…と2人で色々と考えたのを、あのメガネが…いや前田さんがやらかしたんだ…
「伊黒さん…私では…な」
「お前の話は聞かない出ていけ…」
静かに…だけど蛇柱から出た凄まじい殺気に体がすくみ、誤解を解けないまま三葉は屋敷を後にした
話を聞いて貰えない悔しさから、唇を噛み俯きながら歩く三葉の目からポタポタと涙が落ちる
少し気持ちを落ち着かせようと、帰り道の途中の少し小高い丘の上にある神社に行く事にした