第10章 happybirthday【不死川実弥】
百合の花の匂いがする…そう
気付いたら
目が覚めた
目の前には三冬がいて俺の髪に指を絡めて頭を撫でていた
5分前
くくくっ…と笑い声が聞こえて目が覚めた
夕方の茜色になる手前の光が障子に透けて淡く部屋を照らす
実弥さんの銀髪が淡い光にあたりキラキラとして綺麗だった
微笑み眠る幼い寝顔に愛しさが溢れ、そっと手を伸ばし柔らかな髪にふれる
くすぐったそうにして長いまつげが震えたと思ったら実弥さんの目が開いた
目覚める瞬間にぼんやりと何度かまばたきをする仕草が可愛くて大好きだった
「いい夢だったみたいですね」
三冬の指が心地よくてまばたきをする
頭を撫でられたまま三冬の首に顔を寄せると…いつも俺を引き留めてくれる百合の…三冬の匂いがした
「決戦の日に見た夢の話したろ?あの日はクソ親父に追い返された…今日は弟妹達六人にゆっくりしてから来いって追い返された……」
俺の頭を撫でていた手が止まる、顔を上げて見るとふわりと三冬が笑う
「では弟妹のお許しがでたなら実弥さんはゆっくりゆっくり生きて下さいね
私には…私達にはまだ実弥さんが必要ですから」
三冬が俺の頭を抱きしめる
「あらっ?」と声をあげて何かを摘まんだ
「禰豆子ちゃんかお嫁さん達は花を持ってきたんですか?」
俺に見せるようにして、手のひらに黄色と桃色と白の花びらをのせる
寿美と貞子とことが舞い上げだ花びらだった
あの日…無惨を殺して皆が安心して夜を過ごせる世界にする為
命を燃やしつくしてもいいと思い戦った
その思いと多くの犠牲の果てに手に入れた鬼のいない世界に、俺は運よく生き延びて三冬と俺の子供が誕生した
弟妹の思い…皆の思いが風に乗り俺の手のひらの中にある
俺達が勝ち取った世界で三冬と小太郎、暁の側にできるだけ長くい生きていたいとただ願う
「すげぇいい夢だったなぁ…」
もう少しだけ夢の続きが見たくて百合の香りを吸い込みながら目を閉じた
ー終ー