第10章 happybirthday【不死川実弥】
「やだ…泣いちゃう」
そう言った先からもう涙をこぼす私を実弥さんが笑う
山になっている肌着の横に昨日買ってきた物が風呂敷に包んだままになっているのが見えた
腕の中の暁はお腹が一杯なり眠っていた
暁を布団へと寝かせて
実弥さんに風呂敷を取ってもらい結びを開く
深い緑色の襟巻を実弥さんの首にあてた
「やっぱりこの色が良く似合います」
若葉色は炭治郎くん、山吹色は善逸くん、青色は親分、桃色は禰豆子ちゃんと私に昨日買ってきた物だった
「おはぎも作ろうと材料は買ってきたんですけど…今日は作れそうにないのですいません」
片手で小太郎を抱えたままの実弥さんの首に襟巻を巻き付ける
「おはぎはいつでもいいだろ?なんで謝ってんだ?」
深い緑色の襟巻を軽く引っ張り実弥さんの顔を引き寄せて口付けをした
突然の口付けに驚いてまじまじと三冬を見た、ちょっと口を尖らせるのは何か言いたい事がある時の癖だ
「今日じゃないとダメですよ…実弥さんのお誕生日じゃないですか!
食べきれないくらいのおはぎを作ってあげたかったんです」
…そう…か…今日は…
もう一度引き寄せられて三冬の柔らかなが唇が、額に、目蓋に、頬に落ちてくる
「今日は襟巻と口付けしか実弥さんにあげれませんけど…床上げがすんだら沢山作りますね」
三冬は笑うと最後にもう一度お互いの体温を感じるくらいの長い口付けをくれた
唇に感じる柔らかく温かい感触と、俺の腕の中と、三冬の側で静かに眠る柔らかな希望の光が俺の体にしみてくる
「さ…ね…みさん?」
唇を静かに離した三冬が俺の名前を呼び指先が俺の頬をなぞる
あぁ…俺は泣いているんだな
そう自覚すると何故か幸せだった
「ありがとう三冬…お前に出会えて俺は本当に幸せなんだ…」
この笑顔をずっと見ていたいと思う
「三冬は俺に新しい家族を二人も産んでくれたろ?これ以上の贈り物なんかねぇよ」
腕の中の小太郎が ふぁ とあくびをしたら三冬の隣で寝ている暁もあくびをする
こんな仕草にも涙がまたポロリと三冬の指を濡らした
「よかった…私ばかり幸せだと思ってました
私は実弥さんをちゃんと幸せに出来ていたんですね」
三冬の顔に手を伸ばし親指で柔らかな唇をなぞる