第9章 恋に落ちる 2 【不死川玄弥】
「では…もう診察は終りです
なにか体に変化があったら必ず来てくださいね」
全身の筋肉と皮膚を診られて爪と唾液を採られ
最後に採血が終り胡蝶さんが綺麗な笑顔で言った
「ありがとうございます」
隊服を着ているとドアを叩く音がした
「しのぶ様。診察はは終わりましたか?」
「終わりましたよ」 と胡蝶さんが答えるとドアが開き
「玄弥さんがくれたアラレが凄く美味しいんです しのぶ様も玄弥くんもみんなと一緒に食堂でお茶にしませんか?」
すみ がひょこっと顔を出した
「あら、今日は甘味ではないのですね」
お土産をいつも持ってくるのを知っている胡蝶さんが俺を見た
「新しく開店したアラレ屋で…本当に旨かったから…」
「そのアラレ屋さんは名嘉間屋って屋号で1週間前に開店して今すっごく評判なんですよ!甘塩っぱくて本当に美味しいんです」
今にもぴょんぴょんと跳び跳ねそうに興奮して話す すみ に胡蝶さんも
「では少し休憩しましょう」
と椅子から立ちあがった
「俺…まだ寄る所があるから、今日はこれで失礼します」
しゅん と残念そうにする すみ の頭をポンと撫でて
「すみちゃんごめんな…また今度な」
と言って花の入ったもう一つの紙袋を持って蝶屋敷を出ていった
しのぶが食堂に入ると、ちょうどカナヲがアラレを口に入れてニッコリ笑っていた
(あら、可愛い)
カナヲの久しぶりの笑顔にしのぶは玄弥に感謝して、自分も一粒アラレを口に放り込みカリッと噛んだ
糖蜜の甘い味と香りが口にひろがりそのあとに少し塩っぱ味がくる、その後に香ばしい香りが鼻に抜けて思わず微笑んでしまう
(なるほど…カナヲも笑う訳だ)
「本当に美味しいですね…今度はみんなで一緒に買いに行きましょうね」
しのぶがそう言うと三人娘とアオイ、カナヲが、嬉しそうにして「ハイ」と答え久しぶりに食堂での休憩が笑顔で溢れていた
(それにしても、鷺草の花束とこのアラレを持って玄弥さんは誰に会いに行かれたのかしら)
鷺草の花言葉を思い出しながらしのぶは又微笑んだ