第8章 願わくば花の下にて 【鬼舞辻無惨】
鬼無瀬 弥世 (きなせ みよ)
15歳になる頃から、少しずつ誰か分からない記憶がふわふわと私の中にあった
藤の花を見ると泣きたくなり、あの藤の木を探しに行かなきゃと思うのが不思議だった
でも「あの藤の木」とは?
結局その答えは見つからないでいた
そんな時、朝の番組で日本最高齢の「産屋敷さんです」そのアナウンサーの声が耳に届いた時に
私の中にあるふわふわした記憶が鮮烈に甦る
会いにいかなければ
その衝動に突き動かされて、その日は学校をさぼりATMでお金を引きだし、スマホで検索したおして御館様の所へとたどり着いた
相変わらず優しい方で突撃した私を
「久しぶりだね弥世…」
と言ってくれた
全ての言葉と感情が涙になってしまい号泣してしまった
大学は御館様の屋敷に通える所にしよう
沢山の家族に囲まれて幸せに暮らしている御館様だったけど
主様の償いの為と9人目の私が受けた身に余るほどの優しさへの恩返しがしたかった
屋敷の裏には隊士のお墓があって、今でも産屋敷家の皆様が手入れをされている
大学生になり御館様が家族に私を
「裏のお墓に入っている方のひ孫さんだから、好きなようにさせなさい」
と、嘘を付いてくれて私は好きな時にお墓参りが出来る様にしてくれた
嘘を付かせた事を詫びると
「慎寿郎は弥世を本当の娘の様に可愛がっていたから半分は真実だよ」
そう言って笑ってくれた
大学に入った頃からあの藤の木を私は探している
鳴女さんにあの戦場に飛ばされてしまった為に、藤の木の場所がさっぱり分からない
こんな事ならしっかりと住所だけでも覚えておけばよかったと100年たってから後悔した
樹齢400年位の藤の木を探しては見に行っているそれを私は5年続けていた
大学は看護科だったのでそのまま大学病院の看護師として就職した
昨年やっと免許を取って車を買った、これで今まで行けなかった藤の木にも会いにいける…
今年23歳になる…ラストチャンスかもしれない
数年前に移植された藤の木の花が満開だとHPが更新されていた
鬼の字が付いた神社…車が無いと不便な所にあるから昨年は行けなかった
エンジンをかけナビをセットすると
「所要時間3時間です」とナビがしゃべった