第8章 願わくば花の下にて 【鬼舞辻無惨】
あの頃私の犯した罪せいなのか弥世はいつも短命だった
願わくば太陽の下で君と過ごしたい
光に溢れ輝きを増す世界を君と過ごしたい、苦しくて憧れる世界だった
平成と言う時代に私は産まれた
犯した罪を考えたら驚くほど早く生まれ変わった私は、大きな産声が分娩室の外まで響いたらしい
誕生日になるといつも父親が懐かしいそうに言っている
平成生まれの私はすこぶる健康体で大学まで野球をやっていた
いつからか私が少年の時には鬼となっていた記憶があり、一度読んだ事のある本くらいの感じの記憶でしかなかった
まぁ…あんな前世の感情まで引きずっていたら今の私は生きていられないと思うから、ぼんやりとした記憶で良かった
そのぼんやりとした記憶の中の藤の花の美しさに魅了されてしまい
樹木医になる為に大学に通い勉強をした
私が2年の時に教授が樹齢400年の藤の木の移植プロジェクトがありそれに携わる事が出来た
その藤の木は…あの弥世が植えた物で私は運命と、この藤の木が持つ不思議な力を感じずにはいられなかった
このプロジェクトは成功し翌年に沢山の花を付けて、参加した全員と満開の花の下で記念写真を笑顔で撮った
それから4年が経ち、公園設計の会社に就職をして働きながら、藤の木を専門に診る樹木医になる目標の為全国の藤の木を廻り、その管理をする会社や職人に話を聴いたりと日々勉強をしている
そして今日は移植したあの藤の木が、満開の時期を迎えたとHPが更新されたので見に行く事にした
今年も約束の場所である藤の木に会いに行く
独り暮らしのアパートのドアを開ける、いつもより冷たい空気が朝日に照らされ水分が煌めいて見えるような美しい朝だった
こんな美しい朝は彼女が…弥世が待っているかもしれない…