第8章 願わくば花の下にて 【鬼舞辻無惨】
黒い服を着た人達が
「陥没事故です!」
と叫び人を誘導している その先に行こうとする私に「危険です」と言って行かせてくれない
「嘘!無惨様と鬼狩りの戦いでしょう!この先に私の大切な人が戦ってるの!」
予想外の言葉に相手が戸惑ってる隙に先へと走った
「待って!」
「無惨が地中へ逃げるぞ!」
飛び出した先には…見た事の無い無惨様の姿があり、朝日を浴びた無惨様はさっき見た鳴女さんの目のようにポロポロと崩れていった
間に会わなかった…無惨様を一人で逝かせてしまった
回りの黒い服の人建ちは、歓声を上げる人喜び泣く人長い戦いが終わり安心して泣いている人に溢れていた
私だけが違う涙を流し泣いていた
「離れろ!炭治郎が鬼になった!人を食べる前に首を切れ!」
…まだだ…まだ無惨様は生きている…悲しい運命が続いている…
私だけ知っているあの愛しい人の1000年以上もの苦しみ…悲しみ…
「お兄ちゃん」
「無惨様」
私が叫んだ名前に黒い服の人達がギョッとした顔をした
この少年に沢山の人が「帰ろう」と呼びかけ手を伸ばし、少年の背中を押し上げていた
「炭治郎!置いていかないでくれ」
「無惨様…主様…主様…」
沈む主様の姿が見えた
「み…よ」
上から必死に腕を伸ばし主様の手を取った
「弥世が待っています…鬼の主様はここで終わりにしましょう
あの藤の花の下でお待ちしてます何年何百年何千年でも…弥世は待っています
次は二人で限りある命を生きて行きましょう
主様の作った悲しみは弥世が出来るだけ償っていきます
だから…だから…必ず弥世を覚えていてください…」
私から溢れた涙が主様の顔を濡らす
「お前を…忘れられるものか……」
最後に主様は笑って消えて行ってしまった
桃色の着物を着た女の子と一緒に抱きついていた少年が目を覚ました
良かった…人に戻っている…
「お前は…誰だ?」
半々模様の羽織を着た青年が私の肩に左手を置いた
「産屋敷様と…主様の兄上様の子孫の方とお話をさせて下さいませ……」
「お前の主とは…誰だ?」
「鬼舞辻無惨でございます…」
私はもう一度額に土が付くほどに頭を下げた