第7章 匂いに酔う【竈門 炭治郎】
湯浴みを終えた炭治郎が居間に入ってきて、踏み台を持ったまま美桜が振り向くと洗い髪からはポタポタと滴が落ちていた
「炭治郎くん、ダメだよちゃんと髪は拭わなきゃ…山の夜は冷えるから」
炭治郎を座らせ、最近町で購入したタオルを持ってきて後ろから炭治郎の濡れた髪を丁寧に拭う
「ふわふわして気持ちいい…」
気持ち良さそうに目を閉じた炭治郎を斜め後ろから眺めて美桜はクスクスと笑う
「このタオルは恋柱の蜜璃ちゃんから教えてもらったの。蜜璃ちゃんはハイカラな物やかわいい物が大好きだから町に一緒に行くと色々と教えてくれるの」
大体拭き終えて少し乱れた髪を手櫛で整えて
「はい、終了」
と炭治郎の肩をポンと叩くと「ありがとう」と炭治郎は嬉しそうに笑う
「美桜さん…その踏み台は?」
「あぁ…もう虫がでるから蚊帳を張ったの炭治郎くんの寝床の準備は終わったから後は私の蚊帳を張るだけだよ」
美桜がそう言うと炭治郎は少し考えるような仕草をしてから美桜の踏み台を持つ手に触れた
「…蚊帳は…1つでいいんじゃないかな」
「ひとつ?」
美桜の不思議そうな顔を見て、炭治郎はキュッと触れた手を握る
「昼間のように二人で眠ればいい…と思う…俺はそうしたい」
照れながらも美桜の翡翠色の目を見て言う炭治郎の少しだけ色気のある視線に美桜はドキドキした
初めて薬草を取りにきた時の少年の無邪気さは今は消えていて、大人の男性の雰囲気をまとい色気まで出ている
上弦の鬼との戦いや、師と仰げるほどの人を失った悲しみを乗り越え手にいれた覚悟や強さが以前より炭治郎を成長させたのだろうか…それとも美桜の炭治郎への思いの変化なのか
美桜には炭治郎が今は少年としては見えなくて愛しい思いが溢れて顔を赤くしながらも、一緒に寝たいと言う炭治郎の思いを受け止めて頷いた
鬼殺隊の里とはいえ用心にこしたことはなく、美桜は藤の花の香を炊き鬼よけの準備をして炭治郎の待つ客間へと向かった
小さな行灯の光に写し出された炭治郎は褥の上に正座をして座っていて、美桜の姿を見ると内側から蚊帳を上げた
蚊帳の中に入る様に手招きをする炭治郎を見る
炭治郎くんが…色っぽい…
美桜の心臓は騒ぎだした