第6章 初めての人【宇随 天元】
姉思いの冨岡は海奈帆に対しても姉と同じ気持ちを持っている。
煉獄から見ても幼なじみの海奈帆にだけは冨岡は過保護なのだ。
月曜日…
校門の前には服装チェックの風紀委員と、挨拶当番の…冨岡が立っていた。
いつもはマスクなどしない海奈帆の変化に気付き、遠くから海奈帆を見つけてじっと見つめている。
腫れは引いたのだか鼻の横にできた赤黒い痣は消えなかった
「立花!顔を見せろ!」
飛びかかるように冨岡は海奈帆に駆け寄った
煉獄は学園の隣にある職員用の駐車場から校門へ行くと、生徒達がざわざわとして人だかりができている
「大丈夫だから!」
「大丈夫かは俺が見て決める」
校門の前でいい大人が2人で揉み合いになっているのを見つけた
説明に納得が行くまで絡む冨岡と、必死に伝えようとする海奈帆の姿は高校時代と全く変わらない。朝から予想はしていた光景に思わず吹き出して笑ってしまう
その笑い声が海奈帆に届き煉獄の姿を見つけた
「煉獄!笑ってないで助けてよ」
「冨岡、ここでは生徒もいる。後で美術準備室に行こう、俺も宇随もちゃんと説明できる」
煉獄は穏やかな声と、ポワンとさせる笑顔で冨岡に話しかけ海奈帆の腕を取り校門をくぐる
「冨岡はまだ挨拶当番が終わってないだろう」
一緒に行こうとしていた冨岡にやんわりと言うと、明らかに不満そうに口をムッとさせるも2人に背を向けた
廃部になった園芸部の部室が今は海奈帆専用の部屋になっていて、そこから直接中庭に行く事ができる。いつもの紺の繋姿に着替えて美術準備室に行った。
「なんでお前は1人で無茶をするんだ?足も以前の様には動かないんだぞ!
危ない事は俺か煉獄か宇随に頼れ!」
担任をしている宇随がホームルームが終わり準備室に戻ると、冨岡は海奈帆の赤黒い痣に触れて凄く悲しそうな顔をして
「お前は綺麗なんだから顔に傷をつけるな」
金曜の話を聞いた冨岡は14歳の海奈帆の殴られた顔を思い出し顔を近づけた
「冨岡!」
声がして振り向くと、宇随が冨岡を海奈帆から引き離し胸元を掴んだ
「海奈帆に何をしようとした?」
海奈帆は驚き宇随の手を握った
「天元?どうしたの」