第6章 初めての人【宇随 天元】
口を押さえられ声が出ず男の指を噛み、顔を見ようとサングラスとマスクに手をのばしたら無言で何度も拳で殴られ首を強く絞められた。
14歳の海奈帆は恐怖に支配され暴れる事も出来なくなり、唇をギリギリと噛みこれから起こる事の恐怖に震えた。
海奈帆の携帯が鳴った。
男は携帯をバックから取り出し電源を切った。
たぶん冨岡からだろう…ごめんね…
男は無言で海奈帆の首を左手で押さえたまま、右手で体をなで回し制服のボタンに手をかけた
美人だ綺麗だと勝手に回りが騒ぎ、仲の良かったグループの女子から妬まれ、挙げ句にこんな理不尽な目に合わされる…こんな顔なんか大嫌い!!
抵抗を止めて大人しくなり震える海奈帆のまだ幼い膨らみに男は手をのばした。
「たちばなー!」
初めて聞く冨岡の大声が海奈帆の耳に届いた
一瞬男が続けるか、逃げるかを迷い海奈帆の首を押さえた左手が少し緩んだ。
「とみおかー!」
まだ恐怖残り思っていたより小さな声だったが冨岡には届いたようで
「立花!」と叫ぶ声がこっちを向いた
「クソッ」
男は海奈帆から体を離し海奈帆の胸元を蹴り上げて逃げ出した。
今度は痛みで体をくのじに曲げて痛みに震える、どうにか携帯を取り出し冨岡に連絡をした
駆けつけた冨岡は海奈帆の姿を見て絶句し震える海奈帆を抱きしめて背中をゆっくりと撫でた
海奈帆の震えが収まると、トイレの手洗い場でハンカチを濡らし海奈帆の顔を拭いて血を拭った。
拳で殴られた顔は腫れ上がり左目は潰れ、蹴られた肋骨は折れていた
「ごめん…ちゃんと待ってたら良かった…それにありがとう…見つけてくれて……初めてがこんなんじや最悪だった……」
「何もされてないんだな?俺は守れたか?」
ナニモサレテナイ?…たぶんされてない体を触られただけだ
ホッとして初めて海奈帆の目から涙がポロポロと流れ、噛みしめた時に切った唇の傷に染みて手を口にやった
「わかった」
そう言うと口にやった手を冨岡が掴んだ、冨岡の綺麗な顔が海奈帆に近づいてくる。海奈帆は涙でぼんやりとした視界でそれを見ていた。
唇に柔らかいのが2回触れた…
「立花の初めては俺だ、大丈夫だ」
真っ赤な顔をした冨岡の顔が離れていくのを呆然と海奈帆は見ていた。
大丈夫って…なにが?