第6章 初めての人【宇随 天元】
「不死川にも言えば大丈夫だ!」
「えっ!えぇぇェェえ!知ってるの?煉獄はそういうの鈍いと思ってた!」
「俺じゃなくて、千から聞いた」
「千ちゃんが?」
千寿(せんじゅ)は歳の離れた杏寿郎の妹で、兄に似てくるくるした大きな目をした美人さんで現在中学生だった。
海奈帆は千寿とは仲良しで、千寿は海奈帆の事を「お姉ちゃん」と呼び海奈帆をメロメロにしている。
ちなみに千寿も記憶があり、杏寿郎と海奈帆をくっ付けて本当に姉にしようと思っていたが、兄から宇随の話を聞いてあきらめている。
「俺の家で冨岡と不死川と宇随で飲んだ時に、冨岡と不死川の膝がぴったりとくっついてたらしい。俺と宇随が向かいあっていたから気づかなかったが、千は料理やら酒やら運んでいたからな…それに千は腐女子だ!私の目はごまかせませんっと自信満々だった」
中学生に見破られるか…
「それに不死川は軽く香水つけて誤魔化してるがな俺は多少鼻が効くんだ。不死川が柔軟剤を変えると冨岡からも同じ柔軟剤の香りがする」
そりゃバレるな…
「立花は何でわかった?」
「私は中学生の時から冨岡の対象は男って知ってるの…だから学園に就職して、職員室での冨岡を見た時にわかった。蔦子姉さんに見せる顔してたからね」
海奈帆は中学2年の頃から冨岡に彼氏のふりをさせている。
中学生になり、次第に体が子供から大人へと変わるなかで海奈帆は自分の容姿が嫌になった。
通学路には海奈帆を見るために、同じ時間帯に通学路を歩く男子や、知らない大人が居たり気持ちの悪い思いをしていた。
それを幼なじみの冨岡に愚痴ったところ
「俺が毎日迎えにいく、帰りも送る」
そう言って翌日から実行に移してくれた
姉思いの冨岡は、幼なじみの海奈帆にも同じ思いでいる。ちなみにその思いは現在も続いているから何かと海奈帆を大事にしてくれていた。
2年の時には海奈帆は170センチあり大人びていて制服姿がなんとも艶めいていた。
この日は冨岡が体育祭の応援団の練習へ先輩に連れていかれ、仕方なくその練習を眺めて待っていた。
だが、気の短い海奈帆は我慢の限界がきて冨岡に見つからない様にこっそりと学校を出た。
まだ明るいからと安心して公園に入った時に突然男から手を引かれ叫ぶ間も無く公園のトイレの裏に引きずり込まれた