第6章 初めての人【宇随 天元】
「あぁ…必ず見付ける。約束する」
「約束ね…」と言って微笑み静かに目を閉じた。美名保はそれから、昏睡状態になり次第に呼吸が浅くなり宇随の腕の中で亡くなった。
「…悪かった」
海奈帆から少し距離をとり背中を向けた。
咳こみ血を吐いた姿が、前の美名保の姿と重なり宇随を激しく動揺させる。
指先の震えが止まらなかった
違う…今じゃ結核は治る病気だ。それに海奈帆は美名保じゃない
独り背を向け何やら考えこむ宇随の背中を海奈帆はぼんやりと眺めていた。
警察やら救急車が来て、3人が警察署から出れたのは21時を過ぎた頃だった。
海奈帆は再三被害届を出す様に進められたが、相手の肋骨を何本かと鼻骨を折っているからお互い様でいいと言って断ってきた。
警察署をでる頃には殴られた顔が腫れ上がり、流石にこの顔では電車に乗れないから走って帰ると言い出した海奈帆に
「今日はダメだ!立花は俺が送るから一旦学園に帰ろう」
煉獄の有無を言わさない視線で言われ、何故か煉獄には素直な海奈帆は頷き3人は学園へと戻った。
「天元…変だったね」
宇随とは学園で別れ、車を少し走らせると、海奈帆は真っ直ぐに前を見ながら煉獄に話しかけた。
「宇随も色々と大変なんだろ、待つ身は辛いからな」
??
「宇随は見つけたのだ!そしてずっと待ってる!」
「??…何を?」
信号で車を止めた煉獄は海奈帆の頭をわしゃわしゃと撫で
「それは言えない。一度宇随に聞いてみろ」
と言って笑った。
煉獄杏寿郎も宇随と同じ前の記憶があって宇随から美名保の話を聞いていた
美名保の記憶は16歳までらしいが海奈帆には思い出して欲しい訳ではない
そう宇随は言っていた
遊女になり16歳で労咳で死んだのだから、決して幸せな人生ではなかったのだろう。
宇随は3人の嫁を本当に大事にしていた。たまに宇随の屋敷に行くと縁側でニコニコと4人で楽しそうにお茶を飲んでいた。とても幸せそうな姿が俺は羨ましく思っていた。
そして今は立花一人を宇随は17歳の頃から10年もずっと思い続けている。
「久しぶりに今度、冨岡の家に飲みに行くか?引っ越ししたらしいからな!」
「…冨岡の家?…はダメな気がするな」
たぶん不死川先生と居るんじやないかな