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かわいいひと

第6章 初めての人【宇随 天元】





その日の深夜、宇随は美名保の居る離れに戻ってきた。

小さな火鉢に火が入っていて、鉄瓶から蒸気がゆらゆらと上がっている。

美名保の隣には布団がもう一組敷いていた。

枕元には水と煎じ薬と金平糖が乗ったお盆があり、煎じ薬と金平糖が減っていた。



「雛鶴…」

「……申し訳ありません」


夫の少し低い声に、美名保の側に控えていた雛鶴が頭を畳に付けた。

宇随が雛鶴の手元を見ると、美名保が雛鶴の手を握りしめている


「天元様が任務に出た後に、お粥と煎じ薬をお持ちしました。でもあまり食べる事が出来ませんでしたから、金平糖ならと思いまして……勝手をしました…」



夕方に、雛鶴は鰹節と昆布で出汁をとり、野菜をトロトロになるまで煮込み、布巾でこしたスープを持って来た。

その時に触れた美名保の体温が冷たく、布団を足すにも重たく苦しいと美名保が言うので、火鉢を持ってきて部屋が温かくなるまで、雛鶴は美名保に添い寝をしてポツリポツリとお互いの話をした。


「天元様が帰ってきますから」


雛鶴が布団から出て、肩口が冷えないように羽織を掛けていたらを手を握られてしまい帰りそびれてしまっていた。




「私が、寂しいから眠るまで手を握ってってたのんだの……。だから天元様、雛鶴を怒らないで」


いつの間にか目を覚ました美名保が宇随を見た後に雛鶴の方を見た


「久しぶりに兄さんの夢を見れたの

寒い夜は兄さんに添い寝してもらってたから懐かしかった

ありがとう雛鶴さん」


美名保は雛鶴の手を離して宇随の手を握る



「ごめんなさい……みんなを怒らないで、私すごく嬉しくて幸せだったの…だから……」




「……わかった」


宇随は雛鶴にもう母屋へ帰るように視線を送り、雛鶴はもう一度頭を下げて離れを出て行った。













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