第6章 初めての人【宇随 天元】
目を開けると、目の前に3人のタイプの違う美人さんが心配そうに美名保を覗き込んでいた。
「よかった…昨日は凄く顔色が悪かったから、目が覚めないのかと思ったぁー」
「バカ?縁起でもないこと言うんじゃないよ!」
「くたくたに煮詰めたお粥を作りました。食べられそう?」
須磨が優しく美名保の背中に手を回し、マキオが座椅子を差し込み美名保の体が冷えないように羽織をかける。雛鶴はレンゲですくったお粥をフーフーと冷まして美名保の口に持っていく。
美名保は戸惑いながらもお粥を口にいれた。
優しい味が広がり、飲み込むとお腹が温かくなった。羽織の温もりと、3人の優しい眼差しに、美名保はポロポロと涙を流しながら雛鶴が冷ましてくれるお粥を食べた。
人にこんなに優しくされたのはいつだったのか思い出せない…
最後に少し苦い煎じ薬を飲み、口直しに小さな金平糖を口に放りこまれて、その甘さにまた美名保は泣いた。
「もう少しお休み下さい」
そう言って3人は出て行く前に、煎じ薬の残りと水と金平糖を枕元に置いた後、厠の場所を説明してから母屋へと帰っていった。
美名保は薬が効き始めたのか再び眠りについた。
3人の嫁達は運ばれてきた時の美名保の体と、夫からの言葉で美名保の死は避けられない事は感じていた。
それでも何かできないかと、夫が任務に出た時を見計い怒られるのを覚悟して見にきたのだった。
美名保の顔色は全く良くなかったし、雛鶴の作った重湯のようなお粥もすするくらいで食べていない。大量に吐血して、血液が少なくなったせいなのか、急激に体が弱り食べ物を受付ない。
食べれない時の為に、忍特製の煎じ薬と金平糖の甘さで少しでも喜んでくれたらと小瓶に詰めて持っていった。
「美名保様…優しい笑顔だったね」
「綺麗だった」
「お粥よりスープがいいかしら?煎じ薬は飲めたからね」
長が勝手に決めた3人の嫁だったが、2年のも間あまり家に寄り付かない夫でも支えになろうとしてくれる、気立ても良く、強く優しい嫁達だった。