第6章 初めての人【宇随 天元】
「先生達は高校からの友達なんでしょ、なんかいいね楽しそう」
部長は「また月曜ね~」と言って最近告白されたらしい1つ下の 部員と帰っていった。
「楽しそう…か」
俺はずっと取り残された感じなのにな
思い出すのか試しに海奈帆が重機で整備する前の花壇を、芸術と称して爆破してみたのが3ヶ月前、職員室で海奈帆は今まで隠していた性格の激しさを爆発させ、海奈帆に対して好意を持っていそうな職員を遠ざける事には成功した。が、海奈帆の記憶を揺さぶる事は出来なかった。
父親でもある頭領が勝手に決めた3人のくノ一を嫁にもらった。15歳で性欲だって有り余るほどあった。が、父親へのなのか忍として生きる事への反抗なのか分からないが、嫁には全く手を出さず家にも帰る事が少なかった。
皮肉にも今の海奈帆に出会った時と同じ17歳の時に任務で15歳の美名保(みなほ)に出会った。
場所は京都、島原花街、島原随一との呼び声高い「桜木太夫」の新造の1人が美名保だった。
15歳にしては大人びた寂しげな美人で、少し俯き首をかしげる様にお酌をする時の白のうなじが色っぽいと新造の時から番付に載るほどの女だった。
「水揚げ」は是非に。そんな旦那衆が郭主にこぞって送った金子だけでもう一軒郭が建つんじゃないか?などと噂をされるほどの人気っぷりに。姉さんである太夫が嫉妬して殺してくれと依頼があった。
「あの赤い振袖を見ると虫酸が走る」
桜木太夫は吐き捨てる様に言う、聞けば美名保は「赤い色が色白の自分には一番似合うから」と、言って絶対に他の色を着ようとはしない。郭主も金の卵である美名保の言う事を聞き入れるのも癪に触る。
「水揚げの時に殺しておくれ」
そう約束した仕事だった。
何故なら水揚げの相手は桜木太夫の一番の旦那だったからだ。
女の嫉妬には際限がないな…
普段なら様々な旦那衆を虜にする眼差しや、伸ばす手付きに柔らかくしなやかな体も、宇随にしてみれば嫉妬に狂った白蛇にしか見えなかった。
桜木太夫の新しい旦那の振りで座敷に上がり
「美名保…お願いしますよ」
桜木太夫が別の旦那の相手をしている間、太夫の計らいで美名保に酒の相手をしてもらった
なるほどな…
無口で寂しげに酌をする美名保を見て宇随は思った。
鳴かせてみたくなる女だな